トランプのテロ対策が極めて「危険」な理由 クリントンが提案するより現実的な対策とは

拡大
縮小
ブリュッセルの連続テロ以降、米大統領候補も次々とコメント。トランプ氏はテロ容疑者に対する水攻めの拷問を改めて容認 (写真:Doug Mills/The New York Times)

3月22日にベルギーのブリュッセルで起きた連続テロ事件が、米大統領選の話題に上がるのに、長い時間はかからなかった。

共和党の大統領候補指名争いでトップの座を争う不動産王ドナルド・トランプと、テッド・クルーズ上院議員は、予想どおり、イスラム教徒に対する厳しい措置を呼びかけた。トランプは、テロ容疑者に対する水責めの拷問を改めて容認。クルーズは、警察はイスラム教徒居住地域を「パトロールして、安全を確保」するべきだと訴えた。

クリントンが提案する「テロ対策」

恐怖を利用した空威張りは、一部の有権者には効果があるかもしれない。しかし、こうしたやり方(特定の宗教の信者をひとくくりに攻撃する行為を含む)は、同盟国との関係を緊張させ、イスラム教徒を疎外し、国家安全保障を危うくする恐れがある。

これに対して、民主党の大統領候補として本命視されるヒラリー・クリントン前国務長官は、賢く現実的な提案をした。24日にスタンフォード大学で演説したクリントンは、同盟国と協力してテロ組織を倒す計画を示すとともに、パニック反応をいましめた。「テロリストのもくろみにはまって、恐怖に飲み込まれ、私たちの価値観と人道的な義務を放棄してはならない」。

 さらにクリントンは、トランプの発言を受け、いかなる場合も拷問は「行ったり、容赦したり」するべきではないし、「米国は恐怖のために萎縮して、壁の後ろに隠れたりしない」と宣言した。また、クルーズが提案するように、テロ組織の脅しに無差別爆撃で応じるのは「重大な過ち」だと断言。「安易な攻撃は誤爆につながる可能性が高い」と警告した。

次ページ「中東で新しい戦争は大きな間違い」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT