まず、市場の成熟化が進み、ニーズや問題が何かが分かりにくくなってきていること。表面的なニーズや問題(らしきもの)に対応していくだけでは、価値が出しにくいわけです。
テイカーは「近視眼的」
キャリアアナリスト、ダニエル・ピンクのモチベーションに関する有名なTEDのプレゼンテーションがありますが、それによると、「人参や報酬をぶら下げてやる気を出させる方法は、同じ事を効率よくこなす20世紀型のビジネスでは非常にうまく機能したが、問題が複雑化し課題自体が何だかわかりにくくなった21世紀型ビジネスでは、逆に生産性が下がってしまうのだ」と言っています。
テイカーは報酬を得ることがゴールになっているため、それ以上のことをする気がおきません。問題を速く解こうとするがあまり近視眼的になってしまい、クリエイティビティを存分に発揮したり大局に立って考えたりすることができないのです。今後はますますどうしたら他者に貢献できるのかを考え、行動を起こせるギバーが多くの問題解決や革新的な企画の鍵を握ることになるでしょう。
次に、ソーシャルネットワークの普及により、ギバーのしたことが顕在化しやすくなってきたことです。普及前を思い越してみれば、テイカーの利己的な振る舞いも、ギバーの利他的な行いも、人が知ることになるには時間がかかりました。それが今では誰がどんな貢献をして、どう信頼されているのかがクリアに見えるようになってきています。ギバーがずっと縁の下の力持ちで日の目を見ることがないということも減ってくるでしょう。
3つ目はギバーでいることが、中長期のキャリア形成においてメンタルリスクを和らげる効果があることです。「他者の役に立った」という思いは、心の健康に大きく役立ちます。これは科学的にも証明されており、人の役に立つ行動をとるとオキシトシンやセロトニンという脳内物質が分泌されます。これらは気分を改善し、前向きで楽観的な心理状態にする物質で、その心理状態は長く続きます。
自分が役に立ったことを思い出すと心が温かくなるという経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか。一方、目標達成や何かを得た時などに分泌されるドーパミンという脳内物質は、強い快感を与え大きく気分を高揚させるものの長続きせず、次の報酬を求めてエスカレートしていきます。テイカー的な行動で優位に立っても心の満足を得るのは難しいことは今や多くの人が気づき始めています。
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