若者の間で「焼肉女子」が増える意外な理由 消費しないはずの若者がお金を落とす

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さて、ここまでSNSにて焼肉・生肉の画像を投稿する若者の実態を紹介してきた。自身の彼女たちにインタビューを行う過程で、焼肉女子が増加している3つの主な理由が見えてきたので、ここでまとめてみる。

まず第一に、生肉の写真を投稿すると「SNS映え」するという点だ。

若者は、FacebookやTwitter、そしてInstagramなどのSNSに様々な投稿を行っているが、その中で、ラテアートやパンケーキなどの地味な色合いの写真だけを投稿しても目立たず「いいね!」は稼げない。そこで、周りと差別化するために、今回紹介した焼肉女子たちのように鮮やかな色彩でフォロワーの目をひく生肉の画像を使いたいと考えるのだ。他にも、上記の理由から生肉だけではなく、ウニやイクラの画像を投稿する若者も増加している。

第2に、「周囲とは違う私アピール」が挙げられる

焼肉女子はいわゆる「大衆店」ではなく、前述したような金舌、うしごろなどの価格帯が高めのお店を訪れる傾向がある。綺麗な店舗は女性でも入りやすく、さらに名の知れた高級店で焼肉を食べる様子をSNSに投稿すれば、間接的に友人との差別化、また自身の金銭的な余裕やグルメもアピールすることができるのだ。常に人間関係に気を遣っている最近の若者は、直接アピールより間接的な自慢を好むというのも、高級焼肉店を利用する大きなポイントである。

最後に、「太らないアピール」という点もある。前述したように、「焼肉=太る」というイメージは一般的に浸透している。そこであえて、痩せている女子が焼肉・生肉の写真を投稿することによって、自分はこんなに太りそうなものを食べているのに体型を維持している、という間接自慢を意識している。今後も消費しなくなっていると言われる若者がどんな消費をしていくのか注目である。

原田の総評:ポスト焼肉女子をつかめるか?

焼肉女子のレポートはいかがでしたでしょうか。

もちろん、皆が皆、高級な焼肉店に行っているわけではありません。しかし、学生なのにそうしたお店に行く子は増えていますし、少なくとも、焼肉の写真をSNSにアップする子は増えており、かなり一般的な行為になりつつある、ということは言えると思います。

とはいえ、肉の写真をアップする女子が増え過ぎてしまっているので、やや飽和状態になってきつつあることも事実です。

今後、肉の次に女子たちの心をつかむ写真の素材は何になるのか?これを言い当て、自社や自社商品・サービスのプロモーションなどと絡めることができる企業は、若者たちに、しかも自発的に、SNS上で自社商品等の情報を拡散してもらえることになるのではないでしょうか。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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