アカデミー賞で「白人偏重」が騒がれたワケ

ハリウッドの黒い歴史が司会を熱くさせた

今年のアカデミー賞授賞式の司会を務めた米黒人コメディアンのクリス・ロック。強烈な皮肉を連発した(写真: ロイター/MARIO ANZUONI)
筆者のキャスリン・クレーマー・ブローネル氏は、米パテュー大学の助教(歴史学)で、米国の政治的生活にハリウッドが果たした役割などに関する著書がある。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。

 

2月28日夜の米アカデミー賞授賞式で司会を務めたクリス・ロックに、人々はある期待を抱いていた。「白人偏重」への不満から、会場の外で活動家のアル・シャープトンらが抗議行動を行い、アフリカ系米国人監督のスパイク・リーらが欠席する中、辛辣な黒人コメディアンのロックがエンターテインメントと政治とを組み合わせて、何か説得力のあることを言ってくれるのではないかと思っていたのだ。

ロックはこの期待に応えてくれた。

アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーが2年連続で有色人種を受賞候補から外し、スタジオの幹部の大半も白人の男性になっていることを踏まえ、リー監督は黒人がスタジオのトップになるのは、米国の大統領になるよりも難しいと述べていた。

過去50年にわたり、ハリウッドの衣装デザイナーや脚本家、俳優にとってアカデミー賞は、脚光を浴びる機会を求めて切磋琢磨する対象。受賞者のスピーチは辛辣であったり、物議をかもしたりしたものだ。だが今回は、司会者までもが政治的な問題に口を出した。

「レイプやリンチで、賞どころじゃなかった」

ロックはオープニングで、今年の第88回授賞式がここまで抗議を受ける理由を語った。彼いわく、1960年代にアフリカ系米国人は「レイプされたりリンチされたりするのに忙しくて、誰が撮影賞を取ったかなんて気にしていられなかった」のだ。

だがこの発言は、公民権運動にハリウッドが主要な役割を果たした点を見落としている。ハリー・ベラフォンテやシドニー・ポワチエ、サミー・デイビス・ジュニアといったセレブたちは、不公平への注目を集め、公民権運動に必要な資金を募り、人種的偏見に立ち向かうため、銀幕の中で俳優としてのスキルを活用した。

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