どっこい生きてる地方中小私鉄、知恵と工夫で支える地域の足《鉄道進化論》


【紀州鉄道】時速20キロで走る超ミニ鉄道はなぜ生き残れたか

和歌山市から紀勢線特急で41分、御坊に着く。西本願寺別院(日高御坊)の門前に開けた静かな町だ。紀州鉄道はこのJR御坊から西御坊を結んでいる。営業キロ数わずかに2・7キロメートル、純民営として日本最短の鉄道だ。この距離を、平均時速20キロ、8分で結んでいる。

だが、紀州鉄道の名は必ずしもマイナーではない。新聞で「紀州鉄道」のリゾート会員募集広告に見覚えのある人は少なくないだろう。紀州鉄道は、全国に36カ所の直営ホテルを運営する堂々たる企業なのだ。

もともとこの路線は「御坊臨港鉄道」といい、1928年に会社設立、31年に開業した。だが、鉄道は一度も黒字化したことがなく、戦後は乗客減で廃線の危機に直面していた。それを救ったのが東京のある不動産資本だった。72年に御坊臨海鉄道を買収。理由は、信用度の高い「鉄道会社」という看板が欲しかったためといわれている。社名も堂々たる「紀州鉄道」に変更した(79年、経営権は現在の鶴屋グループに移動)。

面白いのは、鉄道会社が不動産事業を始めたのでもなければ、不動産会社が鉄道会社を子会社にしたのでもなく、不動産会社がそっくり鉄道会社へ看板を掛け替えたことだ。

現在、紀州鉄道の利用客数は年間8万6000人(07年度)。年々減少傾向にある。にもかかわらず、この路線が何とか存続していけるのは本業の不動産事業のおかげである。この社会的意義は大きい。ある地元住民は自分のホームページに次のように書いている。「私を含め御坊市民および鉄道愛好家は、赤字にもかかわらずに鉄道を見守ってくれる紀州鉄道経営陣の英断に非常に感謝しています」。


[写真]大分交通耶馬渓線から譲り受けたキハ600型は時速20キロメートルで今日もゆく
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