どっこい生きてる地方中小私鉄、知恵と工夫で支える地域の足《鉄道進化論》

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どっこい生きてる地方中小私鉄、知恵と工夫で支える地域の足《鉄道進化論》

【山形鉄道】高校生通学客の減少続き観光客増へアイデア絞る

山形新幹線の赤湯駅で降りると、片隅に1両編成のディーゼルカーがひっそりと待っていた。この赤湯駅から米沢盆地の北部をガタゴトと、終点の荒砥駅までの30・5キロメートルを約1時間で走るのが、山形鉄道が運行するフラワー長井線だ。
 
 フラワー長井線は、典型的な赤字ローカル線だった旧国鉄長井線の鉄道施設を山形鉄道が無償で譲り受け、1988年10月に営業を開始。乗客の中心は高校生の通学客であり、山形県や沿線の地元自治体などが出資する第三セクターとして発足した。中心の駅は赤湯から30分余りの長井で、アヤメなどの花で有名。これが路線名の由来となっている。

営業開始以来、ずっと赤字が続き、ここ数年は赤字が拡大している。少子化で高校生が減少しているため、経営を改善するには、観光客を増やす以外に妙案はない。

そのため、経営合理化を進める一方で、いろいろなアイデアを実行に移してきた。「トロッコ列車」や「花回廊列車」の運行、1本5000円で吊り革のオーナーを募集する試みなどだ。

今年4月には、初めて公募で選ばれた野村浩志氏が5代目社長に就任した。野村氏は埼玉県出身の41歳。読売旅行社で山形営業所長などを務めてきた。もともと鉄道マニアで、読売旅行社時代には全国各地の鉄道応援ツアーなどを提案してきたアイデアマンだ。「山形鉄道は個人的に応援してきた会社。アイデアを出して、注目され続けるしかない」。

すでに、「日本一なが~いカレンダー」や、削っていくと赤芯から黒芯に変わる「黒字鉛筆」などのグッズを発案し、7月には沿線の銘菓を詰め合わせた「フラワーライナーおみやげ便」も売り出す予定。走行中の車両内で行う「車内会議」も、企業向けなどに企画した。

フラワー長井線では、2001年をボトムに定期外の利用者が上向き始めた。観光客が徐々に増えているためだ。この結果、乗客数全体にも下げ止まりの兆しが見えてきた。これが増加に転じるには、野村新社長の持つ情熱やアイデア、旅行業で積んだノウハウなどがポイントになりそうだ。


[写真]米沢盆地を1両編成でゆっくりと走るフラワー長井線。観光客も徐々に増えている

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