どっこい生きてる地方中小私鉄、知恵と工夫で支える地域の足《鉄道進化論》


【いすみ鉄道】自動車利用の観光客集め「通学の足」存続へ工夫

東京駅から房総半島の太平洋側を南下するJR外房線を特急で80分、千葉県大原に到着する。この大原から大多喜を経て、上総(かずさ)中野まで敷かれた路線がいすみ鉄道である。

大多喜町は徳川四天王の一人、本多忠勝が居城を構え、重要文化財の町家などが点在する房総の小江戸。

1912年に大原から軌道が敷かれ、34年に上総中野で小湊鉄道と接続、JR内房線にもつながった。

だが終戦直後2万人を超えた大多喜町の人口が半減。JR東日本が運行から手を引き、88年に第三セクターとなった。鉄道事業の営業費は約2億円。一方、旅客運輸収入は約1億円で、前08年度と今09年度の2年間に赤字縮減のメドが立たねば廃線も検討される事態となっている。

しかし、いすみ鉄道には二つの社会的使命がある。一つは通学の足。輸送人員の6割が通学のうえ、沿線の学校統合で子供たちは広域からの列車通学を余儀なくされている。

もう一つは、観光資源の提供。わずか6両の気動車をやり繰りし、「増結や延長運転などを実施、観光向け企画列車を捻出してきた」(川上和成・鉄道部長)。またJRや小湊鉄道との連携を強化する一方、自動車も味方とする方向へ発想を転換。「観光バスや自家用車で駅前まで来てもらい、いすみ鉄道に乗ること自体を楽しんでもらう戦略を打ち出した」(高橋清・総務部長)。

こうした努力が功を奏し、08年度の観光客を含む普通旅客は11・5%増。「不況は安・近・短の観光資源を提供する当社にむしろ追い風。5月の連休も順調だった」「収支検証期間の折り返し地点だが、展望は開けてきた」(同)。

6月28日の株主総会で外資系航空会社の職を辞した鳥塚亮氏が後継の公募社長へ就任し、いすみ鉄道は文字どおり軌道に乗りつつある。


[写真]始発駅の大原。この日、茨城県からのバスツアーの一行でほぼ満席に
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