ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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これはワークライフバランスにもつながってくると思うんです。いままでの男性の幹部ですと、ほとんど家庭のことは家に置いてこられましたので、仕事だけしていればよかった。家庭の事情やプライベートを仕事に持ち込むことは御法度というふうな空気が、弊社だけではないと思うんですが、日本の古い会社にはどうしても出来上がってしまっています。その中で女性たちが幹部になろうと思うと、やっぱりプライベートの影響が非常に強い。子どもを産みたいとか子どもを育てたいというときに、どうしたらいいのか非常に悩んだり、不幸にして仕事を辞めなくてはいけなくなってしまったりします。

そうなるより、キャリアプランの中にプライベートを上手に持ち込もう。必要な配慮は堂々と要求して、上司ときちんとオープンに話をして配慮してもらって、その中できちんと昇進をしていって幹部になっていきましょう。そういった幹部がもっと増えてくると、会社の仕組みもおのずと変わってくると思いますので、弊社が女性管理職育成に一生懸命力を入れているのはそこがいちばん効果的だろうと考えるからです。

会社の仕組みを作る幹部をまず変えていく。このためには、特にということではないですが、ワークライフバランスの必要性の高い女性をどんどん登用していって、会社の仕組みが自然に変わるところに持っていきたいという狙いを持って進めてきました。数値的に言いますと、本当にまだまだですが、狙いというか、望みは高く、高い理想を持って今後も進めていきたいと思っております(拍手)。

司会 ありがとうございました。

 帝人さんからの応募の書類を拝見して、私が今年すごく感動いたしましたのは、ダイバーシティ・アンド・インクルージョンというか、多様な人材、それぞれの考え方や生き方を認める、受け入れて受け止めて認める。特にこのインクルージョンという考え方が帝人さんの応募書類の中にあった、ちりばめられていたことです。女性の管理職比率がまだ3%に満たないなど、黒瀬さんがおっしゃっているように、いろいろな意味でまだまだ道半ばというところはありますけれども、何でもそうだと思うんですが、物事って根本の考え方がしっかり定まって、社内での土台がきっちり定まれば、後はついてくるものだと思うのです。

私は帝人さんの活動には前から着目していて、お話を時々伺っていました。黒瀬さんがおっしゃっていた「3年間で女性管理職3倍増計画」について、3年経ったときに伺ったらまだ達成率は半分だったんです。こうなると普通だと投げ出してしまうところですが、それを6年かけて達成された。このあたりの息の長い活動の中で、帝人さんは企業として、ダイバーシティ、そしてさらに進んでダイバーシティ・アンド・インクルージョンという考え方まで理論構築された点が、私は非常に印象に残りました。

数的に言えば、まだまだでしょう。確かにホールディング・カンパニーになったことによって、164社の164名もの多彩な社長さんの歩調を合わせるというのは非常に大変だと思います。ただ、日本の中でも傘下に150社を擁するホールディング・カンパニーで完全にトップダウンのダイバーシティを推進し始めていらっしゃる会社があります。ダイバーシティを推進していくのに、何万人といった大きな組織は動かない。ところが、これが分社化されたことによって、一つひとつの活動のしやすい歯切れのよい組織ができた。加えて、分社化して各社の社長が権限を持っているから、社長を抑え込めば事を進めるのは簡単です。帝人さんのダイバーシティ・アンド・インクルージョン推進の活動が今後ますます加速されることを祈っています。次回はぜひ、大賞を狙っていただきたいと思います(拍手)。

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