ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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去年、ウーマンズ・カウンシルであらためて「女性の活用をやります。力を入れます」と宣言したときに、全社員にアンケートをしました。この10年、3割女性を採用しているので、35歳以下ぐらいの女性の数が非常に増えて、女性の全体の割合は19%ぐらいですけれども、いまの女性社員の半分ぐらいが30代以下になっている。私たちの世代というのは男性と同じ土俵で働かせてもらえるだけでありがたいと思い、長時間労働などにも合わせて働いてきたわけですけれども、いまの若い層はまったく違う感覚を持っていて、そういう女性の上司だとかエグゼクティブは決していいロールモデルになっていない。「ああなりたくない」と言われてしまったりする。そういう意味でも、女性活用ということを考え直しています。

アンケートをとって、私たちにとってよい意味での驚きだったのは、回答率が管理職のほうがずっと高く、たくさんのコメントが返ってきて、しかも非常にポジティブなコメントが多かったことです。この10年の取り組みで管理職側の女性の活用に対する考え方も変わり、女性管理職が増えたことでその下にいる男性社員の働き方も大きく変わってきて、やってきたことは無駄じゃなかったなと思っています。と同時に、ダイバーシティというのは自転車と一緒で、こぐのをやめた途端に倒れてしまうので、ずーっとこいでいなければならない。これは非常に大変なんですけれども、大変だからこそ、やりがいがある仕事かなと思いながら、今日取り組んでいます(拍手)。

須田 応募資料を拝見しまして、さすが日本アイ・ビー・エムさんだと思いました。管理職比率、管理職の人数、エグゼクティブの人数、いずれも断トツですばらしい。

 私、80年代に大学を卒業し、いま大学の教員をやっているのですが、それまでは民間企業で働いておりました。当時、大卒女子を採ってくれる会社というのは非常に少なくて、私の友人なんかもIBMさんに入ったのが何人かいますけれども、いまおっしゃられたように、厳しい、本当に非常に厳しい会社であると同時に、たいへん教育熱心な会社ですね。多分この教育熱心と厳しさ、それに加えて公平な評価といったものが、ダイバーシティ推進の1つの大きなキーワードという気がします。

IBMさんの場合もそうですが、ダイバーシティ推進は、企業生き残りのため、強くなるため、競争力をつけるためで、それで急速に関心が高まっている。結局、いかに社内の人的資源を有効に活用するかという問題です。

私、専門が人事管理で、ビジネススクールで教えているものですから、「経営全体の立場から人事を見よう。どうやったら人事が競争優位に役立つか」ということを日々考えています。その観点から見ると、「男性、正社員、本社採用」といった従来の属人的な要素を重視して昇進とか昇格とかそういうことをしていたら、今後グローバル化の急速な進展や技術革新のスピードのこれだけの速さの中で、競争優位を保てない。そこで、社内にある人的資源をより有効に活用しよう。さらに教育もがんがんやって人的資源を開発すると同時に、その人的資源を十分に活用できるよう職務設計も変えていこうというような職務全体の見直し、あるいは評価全体の見直しを図っている中で、ダイバーシティというものの重要性が高まっていると考えていています。もちろんジェンダーというのもその1つですし、障害者あるいは外国人もすべて大きなダイバーシティの中の要素だととらえております。

われわれ人間は、経験も考え方も得意分野も知識も、一人ひとり皆違います。そうした多くの人材を全員きっちり活用できる仕組み・設計が重要なのです。IBMさんの、長年にわたるトレーニング、教育投資、人的人材開発、厳しい仕事、職務貢献に基づく評価や昇進・昇格に支えられたダイバーシティの取り組みとその成果は、「やろうと思えば10年あればこれだけできる」という見本でしょう。

さらに取り組みを発展させていっていただければと思っております(拍手)。

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