ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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司会 社長の思いや決意を具現化するのが担当部門の黒瀬さん、もしくは黒瀬さんの部門のお仕事ということですが、企業の経営戦略ということにかかわってくると、担当部門だけではなく、経営戦略部門をはじめいろいろな所との連携が必要になると思うのですが。

黒瀬(帝人) ダイバーシティ推進室が人事制度を直接つくるわけではないですし、先ほど申しましたように164人の社長がおりますので、各所にそれなりの役職の人からきちんと働きかけをしてもらうというのが大事な役割になっています。そういう意味では、私の立場では一生懸命台本を書いて、それをどの役職のどの立場の人から誰に言ってもらうかということを考えるというのも大事な仕事の1つになっています。

司会 それでは、取り組み継続のカギは?

黒瀬(帝人) あきらめないことですね(笑)。

宮原(資生堂) 弊社の場合は、あえてわれわれから言わなくても、先ほど受賞式に出ました岩田福社長が積極的に「これは進めるから、こうしなさい」といったことは落ちてきますので、いまのところ、特にコミットメントをお願いするという立場ではありません。

女性にかかわる施策は非常に充実しており、育児休業者も1000人近くになるようなところまで来ていますので、長時間労働とか男性の働き方の見直しがこれからのキーワードになってくるのではないかと思います。

先ほども触れましたが、いま「魅力ある人づくり、職場づくり」ということで、各事業所のトップに宣言をしてもらい、たとえば有給休暇取得率を前年比10%高めましょうとか残業時間を10%減らしましょうといった具体的な数値目標のようなものを掲げてもらいまして、それに届かない人は部下を少し"脅す"というところまでいま少し踏み込んで、人事部と経営企画部が進めています。

お題目を人事とかわれわれ本部の人間が作っても、現場でそれが生かされないとあまり意味がない。現場の働く一人ひとりがそれを実感できるようなところをチェックしていくのが人事課のわれわれの役目と考え、日夜そういうチェック機能みたいなところを働かしている段階です。

司会 チェックというのは具体的にどのようにやっていらっしゃいますか。

宮原(資生堂) 活動計画はすべて1枚1枚出てきますので、それが半期終わった段階でできているかどうかをチェックします。できていない部門に対しては、いつまでにできるのか、あるいはできないのかといった点をトップ同士でしっかり話し合ってもらうようにしています。

司会 それは評価には反映はされないのですか。

宮原(資生堂) あまりにひどい場合は評価にも入れる場合もあるようですが、まだそこまではちょっと行っていません。とはいえ、徐々にですが活動計画書には「働き方」を重視するような内容が随所に出てくるようになりました。

川原(パナソニック電工) 当社の場合、最初に社長が直轄でやるぞと言い出したきっかけは、2005年に各部門から集まった女性6名で立ち上げたプロジェクトによる会社への提言です。提言では、ダイバーシティが進んでいる企業ではトップがきちんと意思表示をしており、この点が一番重要だということ、兼任の単なる片手間ではなくて、きちんと専任の人がいて活動を進めているということを述べ、当社がこれからもっとグローバルに活躍していく企業になるためにも、もっともっと女性の力を生かしたほうがいいですし、ダイバーシティを進めたほうがいいというふうに、詰め寄るような形のものでした。社長にはその場で「よし、わかった」と言っていただき、当時の「女性躍進推進室」を社長の直轄にすること、専任の者を社内公募を行ってつけること、社長が陣頭に立つことを決意してもらいました。

それから、取り組みの成功の秘訣は、しっかりと調査をしてデータで示すということではないかと思います。おそらく経営者の皆さんはダイバーシティが必要だと漠然とながら感じていらっしゃる。ですから、それがなぜ自分の会社に必要かというのをきちんと理解していただくということと、その意志を、社長が本気になっているということを全社に伝えていくことが大事だと考え、日々活動を進めております。

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