ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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 日本アイ・ビー・エムでは5つの社長直轄のダイバーシティ・カウンシルを立ち上げています。「Woman(女性)」は1998年からで、ほかの国よりちょっと後れて開始しました。幸い同年「Japan Women's Council」という女性のカウンシルを立ち上げて、いろいろなノウハウがあるものですから、それを他のカウンシルに展開できるようになっています。当時、社内広報担当だった私も、女性の活用をこれから推進していくうえで社内広報が必要だということで、「Japan Women's Council」のメンバーに参加しました。当初のメンバー10名のうち4名がいま役員、理事として活躍していますが、10年前の状況というのは、社内に優秀な女性がたくさんいると管理職を含め男性社員もみんな思っているものの、どこにいるかわからないというものでした。そこで、地方区だった優秀な女性を全国区に引き上げるという作戦で、社内広報でいろいろ使ったり、社内でタウンミーティングなどでパネルに出してもらうとか司会に女性をアサインするということを通じて、女性のタレントを顕在化させるという取り組みをしてまいりました。

この10年の歩みの中で、当時は女性役員は内永ゆか子氏(現・NPO法人J−Win理事長)ただ一人だったんですけれども、最近では女性のエグゼクティブが26人に増え、1ケタだった管理職も部下を持つ管理職という観点では2ケタの数字になっています。ただ、理系の女性をなかなか採用できないということがあり、数値目標を立ててはいますが、女性全体の数字はまだまだといったところです。

ダイバーシティを推進していくマネジメントシステムの一環として、数値目標をある程度立てています。10年前、女性社員に「Japan Women's Council」のメンバーとして集まってもらったとき、「IBMでは女性活用が進んでいるはずなのに、何をいまさら。気持ち悪い」というのが女性自身の最初の反応でした。それまで男女同権で進めていたものですから、女性だけの数値というのをIBMは取ったことがなかったのです。あらためて調べてみると、5年目から10年目で女性が男性の倍ぐらい辞めていていわゆるM字カーブが見られるし、管理職の登用も1ケタ台。グローバルの観点で見ますと、日本と韓国が女性の比率が全世界の中でビリだった。それが当時の女性自身にもショックを与えました。また、女性の登用と言った際に、男性から「逆差別じゃないか」という声がかなりありましたが、こういう数字を見せていくことで、逆差別と言われるほど女性が多数いるわけではないので、やはりある程度健全な数になるまで、こういうアクションをとりますという形で取り組みを進めてきました。

さまざまな取り組みを実施してきましたが、いちばん大変で時間がかかったのは、女性の登用がどうして必要なのかを男性の管理職の人に納得してもらうことです。それでも10年かけてやっていますと、「雨垂れ石をうがつ」で、当社の粘土層もだいぶ薄くなりまして(笑)、制度もいろいろ作ってきました。

女性活用、ワークライフバランスを推進する制度というのは柔軟な、フレキシブルな、つまりはなかなか一律の管理ではいかないものが多くなるので、正直言って管理職としては面倒くさい。面倒くさいことを超えて、自分の部下の能力を伸ばすことができ、優秀な人材をたくさん活用できるということを腹に落としてもらうまでに10年ほどかかったわけです。

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