ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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司会 では最後に、女性管理職登用部門賞を受賞なさった日本アイ・ビー・エムの梅田さんからお話を伺います。

梅田 日本アイ・ビー・エムの梅田と申します。私は昨年から人事専門の社内広報を担当しています。人事専門の社内広報というのはどういうことかといいますと、最近、人事制度が大きく変わっていまして、年金の問題、ダイバーシティの問題等々、それを社員に人事からの発信でうまく伝わっていない、理解してもらっていないという問題があります。まさにダイバーシティなんていうのは企業文化を変えるというところがありますので、社内広報の専門家が必要だということで、もともと社内広報を担当していた私が人事に異動したというわけです。日本アイ・ビー・エムという会社は、よく言えば女性活用が進んでいて、悪く言えば人使いが荒いので(笑)、人事広報だけではなくダイバーシティも担当せよということで、昨年から担当しています。

 IBMといいますと外資系なので、マスコミの方とかお客様によく「外資系なので、ダイバーシティが進んでいて当然でしょう」「IBMは女性社員の方も男性社員の方も、最初からダイバーシティに対して理解のある人が入社してくるのでしょう」と言われるのですが、日本アイ・ビー・エムなので(笑)、100%近い社員が日本人です。今月で創立72年になり、早くから取り組みを始めましたけれども、よく言われる「粘土層」と言われる男性層もあって、いろいろな戦いや失敗を繰り返し、悪戦苦闘してやってまいりました。いま21世紀の中でダイバーシティというものをどうとらえていくかというのを、IBMグループ全体で見直しをして、ストラテジーを立て直しているところですが、日本アイ・ビー・エムも昨年、新たに「ダイバーシティをもっと推進していく」と社長が宣言しました。こうした中で今回、「女性管理職登用部門賞」をいただいたことを本当にうれしく思っています。

IBMは創業当時から、イコール・オポチュニティという観点で、ダイバーシティや多様な人材の登用を進めてきました。米国に本社がありますので、もちろん人種の問題もそうですし、軍隊の経験のある方を会社でどう雇用していくか、戦争から帰って障害者になった方をどう登用していくかということも、非常に古くから取り組んでまいりました。長年そうした取り組みを続けてきたのですが、IBMという会社は米国の会社ですけれども、永年勤続ですとか縁故を積極的に採用する、そういう企業でしたので、いつの間にか会社の中が同一の思考の、白人の男性のプロテスタントの人が幹部にいるというような経営になっていて、大きな変革に乗り遅れ、それが1993年の経営危機につながった。そこで初めて社外から招いた経営者であるガースナーが「ダイバーシティ」をIBMに持ち込み、これを企業の経営戦略に据えてやってまいりました。

その当時からダイバーシティというのは、福利厚生ではなくて、IBMの経営課題、生き残りの戦略と位置づけて、世界各国に広めてきました。1つの国ではできていても、世界170カ国で経営をしていますので、活動しているところすべてでこれが達成できるようにという目標を掲げてやっています。「企業は市場を映す鏡」という観点から、人員構成をIBMの会社の中の社員構成を市場の人員構成と同じにするということをダイバーシティの目標にしています。

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