ダイバーシティ経営・パネルディスカッション--多様な価値観の尊重・活用で、仕事と企業を変える

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海野 ワークライフバランスの取り組みをかなり幅広くやっている。しかも、制度を作っただけではなく、しっかり運用されており、他社のモデルになるなと思いました。いまは育児が取り組みの中心ですが、ワークライフバランスは育児だけではないことを認識されているので、もっと広くワークライフバランス全体に及ぶものになるよう、ぜひ推進していただきたい。

 また、ダイバーシティは、女性だけで推進してもだめで、周りの男性の理解やサポートがなければ広がらない。ダイバーシティ推進担当者になるのは一般には女性の方が多いのですが、資生堂ではそこをあえて男性の担当者にしている。そこもやはり一つ先に行っている例だと思います。

ただし、ちょっと辛口に言わせていただくと、資生堂さんは女性が多い会社で、しかも化粧品という女性を対象にした会社である以上、もっと経営戦略として見える形で女性の活用をなさるべきだと考えます。「女性管理職目標を30%にした」ということで、この比率を上げるというのは大事ですけれども、トップの役員を見ますと、男性21人で、女性は先ほどの岩田副社長のみというのが現状です。化粧品の会社で、美とか美しさを追求して洗練されたイメージを私たちは持っている。その会社の役員となりますと各事業の責任者になるわけですから、そこに女性がいないというのはがっかりしてしまう。女性がいて引っ張っているというのが、安心して商品を買えるということにもつながる。経営戦略としても、女性や国際的なものを取り込むことがこれからの企業の生き残りには不可欠です。となると、ぜひ役員を数字のうえでも上げていただきたいと思うのです。

こう申し上げると、「トップをそんなに簡単に増やせない。数字は徐々に」「まず今は中間管理職30%、次に上級管理職」とおっしゃるでしょう。しかし、長期の目標として、ぜひ今から明示して達成していっていただきたい。同じ化粧品会社で外資系の企業が日本において、トップの女性比率としてかなりの数字を上げていることに照らすと、いままでも努力すればできたのではないかと思うのです。日本に人材がいないとか将来性が女性の中にないということは、もちろんないと思います。そこをぜひ進めて、次は「ダイバーシティ経営大賞」候補に上がっていただきたいと思います(拍手)。

司会 海野さん、ありがとうございました。

皆様にお断りしておきますが、海野さんに辛口のコメントをとお願いしたのは私です(笑)。日本のリーディングカンパニーとしての資生堂さんにぜひぜひ期待したいということで、海野さんと私の意見が一致した次第ですので、あしからず。

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