フランスは「直感」の育て方が日本と全く違う

その音楽教育に見る感覚と理論の構築法

もちろん、それだけでは成り立たない。立証するための根拠も必要だ。筆者が実際にフランス人と会話すると、「私はこう思う。なぜなら~」とワンセットで答える人が多い。これは子供の頃からの教育の成果だ。子供に対しても「こうしなさい」ではなく、「これにはこういうやり方や考え方がある。なぜなら~。私はこう思うけど、あなたはどう思う?」と問いかける。選択する自由があることと、自分の意見を持つことを教えるのだ。相手を一個人として尊重し、自分とは異なる感覚や理屈があるかもしれないという前提に立っている。

筆者は音楽ジャーナリストとして世界をめぐり、拙著『ハーバード大学は「音楽」で人を育てる』(アルテスパブリッシング)などにまとめているように、海外の音楽教育についての取材・調査研究を進めてきた。その観点からフランスの音楽教育を分析してみると、興味深い。

フランス人は自分独自の演奏をとことん追求

たとえば楽器の演奏。先生に教わった通りに弾くという考え方もあるが、フランス人は原理原則を学んだ上で、解釈は自由として、自分独自の演奏をとことん追求する。そこには「私はこう思う、なぜなら~」という主張がある。

たとえば世界三大コンクールの一つ、チャイコフスキー国際コンクールでは昨年、クラシックもジャズも弾くというフランス人青年が第4位に入賞した。彼はその強烈な個性でもっぱら話題の中心だったが、奇抜な演奏ということではなかった。

彼自身の直感がその音楽の深淵を捉えており、それを潔く表現していたように筆者には見えた。審査員の評価は割れたようだが、モスクワの聴衆も大喝采で拍手がずっと鳴りやまなかった。芸術とは本来合っているか間違っているかということではなく、想像力の豊かさや発想の自由さを育むものだと考えれば、彼らの姿勢は芸術的だといえるだろう。

それはどのように導き出されるのだろうか。まず「曲全体の流れを捉えるプロセス」があり、それから「自分の解釈を深めるための考察」があり、それにしたがって「音や表現を創り」、そして「潔く表現する」。ただ音を美しく正確に弾くのとは違う。だから音楽理論や歴史的背景などの知識も、単なる暗記ではなく、それらを有機的に結びつけながら主体的に表現を磨いていく。そのために、多くの情報の中から「普遍的な流れはどうなっているのか。どこに着目し、どう自分の考えを導き出せばいいのか」という教育を受けているのだ。そ

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