フランスは「直感」の育て方が日本と全く違う その音楽教育に見る感覚と理論の構築法

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そしてこのプロセスを何度も繰り返して、自分のものにしていく。フランス人は自分の考えをいったん解き放つために、質問やディスカッションも多い。時には、ちょっと変わった意見も出てくるかもしれない。でも筋が通っていて説得力があればそれもあり、いやむしろ面白いじゃないか!というのがフランス人の考え方だ。なぜなら芸術とは本来、さまざまな解釈の余地がある。

同音楽院で作曲およびアナリーゼ(楽曲分析)を教えている教授は、次のように言う。

「私の授業では、ただ一つの真実はなく、さまざまな真実がある、と言っています。アナリーゼにおいて一番大事なのは、私はあなたに真実を教えているのではなく、あなたが『楽譜に何が起きているのか』を気づかせるための要素を教えている。それをあなたの感情と関連づけ、あなたの深いところと結びつけてほしい。それを使って、あなた独自の演奏をしてほしい」ということなんです」(クロード・ルドゥー教授・作曲家)。

そこに何が起きているのかを気づかせること――。これは音楽だけでなく、ほかの教科も同じである。フランスの高校1年生の歴史教科書を例に挙げると、各時代の概説や資料の傍らに、質問事項がずらりと並んでいる。

たとえば「マスコミの誕生」というテーマでは、「1881年に可決された法案によって、どのような新しい状況が生まれましたか? 2つの資料から報道機関の進化について何がわかりますか?」「第三共和制下における報道機関の重要性について、あなたの意見を総括しなさい」などがある。

 

感覚が新しい時代を創ってきた

各ページにあるいくつかの質問事項に答えながら、自分の解釈や意見のまとめ方を学んでいく。歴史の授業といえば、史実が一本の線のように連なっていてそれを暗記するものと考えがちだが、フランスにおいては、点と点がどう繋がって歴史が動いてきたのかを考えることであり、点の先には何が起こりうるのかを類推する力を養うものである。つまり、論理力と想像力も培われるのである。

そんなフランス人は、歴史上において時代の先駆者・表現者として、たびたび重要な役割を果たしてきた。たとえば『牧神の午後への前奏曲』『月の光』などで知られるクロード・ドビュッシーは(1862〜1918)、調性を踏まえて作曲するという伝統を逸脱し、調性を曖昧にして新しい表現を試みた。

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