台湾が中国からの直接投資を解禁、経済危機で対中ビジネス拡大に期待

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6月30日、台湾の経済部(経済産業省に相当)は、製造業64分野、サービス業25分野、公共建設11分野など計100分野について中国から台湾への直接投資を解禁した。大陸資本の対台湾投資を認めるのは、1949年の新中国建国以来初めてだ。

昨年5月に成立した台湾の国民党・馬英九政権は、8年間の民主進歩党政権時代に冷却した中台関係の改善に力を入れている。台湾経済は世界金融危機のあおりを受けて低迷しており、実質GDP成長率は2008年第4四半期にはマイナス8.6%、09年第1四半期にはマイナス10.2%と大幅な悪化を続けてきた。

そのため台湾の経済界では、中国との関係改善による大陸でのビジネス拡大への期待が高まっていた。

中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)との間に02年に「中国ASEAN包括的経済協力枠組み協定」を結んでおり、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイに対しては10年から大部分の製品の関税を免税とする見通しだ。これが実現すれば、台湾の輸出産業は大きな打撃を受ける可能性がある。

そのため台湾はこれまでも主要貿易相手国との自由貿易協定(FTA)締結を求めてきたが、台湾の国際的地位の高まりを嫌う中国により牽制されてきた。だが、馬政権の中国との関係改善に前向きな姿勢に中国側も軟化。5月には、年内にFTAに相当する経済協力枠組み協定(ECFA)締結の協議を始めることで中台が合意している。

人件費上昇や外資系企業への優遇策撤廃を受け、台湾企業の大陸での事業環境は厳しさを増している。

一方で中台間には投資保護や紛争処理の枠組みが不備なままで、台湾企業の大陸での立場は脆弱だった。台湾側はECFA締結によって、こうした懸案も解消したい。今回の大陸資本の対台湾投資解禁は、中国をECFA交渉に引き出すうえでの誘い水という位置づけだった。 

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