台湾が中国からの直接投資を解禁、経済危機で対中ビジネス拡大に期待

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今回の「第1次自由化」では太陽光発電、液晶パネルなどの先端産業は対象から除外され、大陸の軍関連企業による投資も禁止された。

それでも台湾では「大陸資本に台湾の重要産業が乗っ取られる」との警戒論が根強い。ECFAに関しても、野党・民進党を中心に「大陸への依存が強まり、香港化する(中国のコントロール下におかれる)」「大陸への雇用流出が加速する」といった反対がある。

7月2日に都内で講演した台湾の蔡宏明・国家安全会議諮詢委員(閣僚級、両岸経済関係担当、写真)は、(1)同じWTOメンバーとして、大陸とは対等に交渉する、(2)大陸労働者の台湾渡航は許可しない、(3)農産物輸入の自由化はしない、という三原則を強調。

「大陸の資本が台湾に一定規模あれば、安全保障上で有利に働く」との見解を示した。

台湾側は、ECFA締結によって、ほかの貿易相手国とのFTA締結に道を開くことを期待する。しかし、農産物輸入を自由化しないなどの台湾側の方針は中国側からみれば「いいとこどり」。台湾側は保険など金融サービス業の大陸参入を期待している一方で、中国製品について現在2000品目以上の輸入を禁止している。

中国側も、台湾側の要求と、中台接近の政治面でのメリットとを天秤にかけながら、微妙な駆け引きをするはずだ。台湾でも、どこまで経済面での相互依存を深めるべきかについてはコンセンサスが形成されていない。今後も、中台間の交渉は相当な紆余曲折を経ることになりそうだ。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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