内田樹、「沖縄は住民投票で独立できるか?」 この際は連邦制の実験をするべき

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結局、日清両国に同時的に帰属していた「琉球王国」という政治的アイディアが失効したのは日清戦争のあとに、負けた清が琉球に対する日本の主権をしぶしぶ認めたからです。

沖縄は日本領土になってからまだ100年あまりです。そして、そのうち30年は米軍が施政権を有していたので、1972年の施政権返還までは本土から沖縄に渡航するためにはパスポートの申請が必要だったのです。

ぜひ連邦制の実験を

基地の存在が沖縄の観光地としての価値を大幅に損なっている(イラスト: しりあがり寿)

もともと日本領土であった土地で、言語も宗教の祭祀も食文化も芸能も「だいたい同じ」である地域が「中央政府と折り合いが悪いから独立する」と言い出すのにはかなり無理がありますから、賛成する人は少ないと思います。

けれども、沖縄の場合はもともと「別の国」です。17世紀に薩摩藩に服属したといっても、軍事的に侵攻して力ずくで支配下に置いたに過ぎません。

そして、その後も琉球は一貫して差別と収奪の対象でした。ですから、日本人は沖縄の人々を久しく「同胞」だと思っていたという主張に僕は与しません。それは沖縄戦における民間人への非道なしうちを見れば、あるいは米軍の軍事基地として「差し出した」事実を見れば明らかです。だから、沖縄が「もう耐えられない。日本から独立したい」と言い出しても、その心情は僕には理解可能です。

もちろん、現在の国際関係から考えて、沖縄が完全な独立国になることはむずかしいでしょう。でも、沖縄の歴史的特殊性に鑑みて、他の都道府県とは違う種類の自治権を認めるというあたりの落としどころは可能だと思います。日本と沖縄で「連邦」を作るのです。アメリカの州のように、教育や医療については沖縄が独自の仕組みを持つことができる。国会には沖縄「州」から選出された議員を送る。通貨や外交は「連邦」政府の専管事項とする。

アメリカの連邦制は世界史上でも例外的な成功をおさめた統治形態です。他のことでは何でも「アメリカでは……」という人たちがなぜ、連邦制についてはその導入を論じないのか僕はつねづね不思議でした。この機会にぜひ日本も連邦制の実験を試みればよいと思います。

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