内田樹、「沖縄は住民投票で独立できるか?」 この際は連邦制の実験をするべき

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沖縄の米軍基地問題を一挙に解決する「日本─沖縄連邦制」はどうでしょうか(写真 :miz / PIXTA)
米軍の基地問題を一挙に解決する「日本─沖縄連邦制」はどうか。永遠に解けそうにない問題も、現代思想の哲学者にして武道家、博覧強記の凱風館主人、「知的怪物」ウチダ先生にかかれば、快刀乱麻な回答がビビッと飛び出ます!
本稿は2015年11月発売の月刊誌『GQ JAPAN』1月号所収のコラムです。

 

当記事は「GQ JAPAN」(コンデナスト・ジャパン)の提供記事です

さる10月13日、沖縄の翁長雄志知事が辺野古の埋め立て承認に瑕疵があったということで取り消し手続きを行いました。と思ったら、政府が強権を発動し、埋め立て承認取り消し処分を無効として工事を再開し始めました。

こうなったら、スペインのカタルーニャ州とか、昨年のスコットランドのように住民投票をやって、本土からの分離・独立を主張したらどうでしょう。という提案は、無責任で荒唐無稽すぎるでしょうか?

日本の領土になって100年あまり

縄独立はじっくり論じる甲斐のある話題だと思います。どういう条件が整えば独立は可能なのか、どういう条件が独立を妨げているのか、それを頭を冷やして吟味することは「国民国家とは何か?」という問いについて根源的に思量する絶好の機会だと思うからです。

歴史を確認しますが、沖縄はもともと独立王国でした。沖縄が「琉球処分」で明治政府に併合されたのは1870年代のことです。それまでもたしかに島津藩に事実上服属してはいましたが、同時に清朝にも朝貢していました。両国のどちらに服属しているのかが明らかでないという点で言えば、華夷秩序の周辺国はそういうところはいくつもあります。日本だってある意味ではそうです。足利義満は対中国では「日本国王」を名乗っていましたが、「国王」というのは中華皇帝が辺土の支配者に与える官名です。琉球も台湾も朝鮮も形式的には中国の属国でした(中華皇帝に朝貢し、代わりに下賜品と官名を受け取るという関係です)。だから、琉球処分で日本領土としたときに、清ははげしく抵抗したのです。

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