内田樹、「沖縄は住民投票で独立できるか?」

この際は連邦制の実験をするべき

沖縄「州」からは米軍基地は撤去していただく。日米同盟のために在日米軍基地は絶対必要だという政治家たちは自分の選挙区への基地設置を公約に掲げて立候補すればいい。「基地は必要だが、うちの裏庭には困る」という言い分は通りません。

内田 樹(うちだ たつる)/1950年生まれ。神戸女学院大学名誉教授。思想家、哲学者にして武道家(合気道7段)、そして随筆家。「知的怪物」と本誌スズキ編集長。合気道の道場と寺子屋を兼ねた「凱風館」を神戸で主宰する。11月10日、生まれ育った東京・下丸子の大田区民プラザで区議との公開対談「やっぱりあきらめられない民主主義」が予定されている。ウチダ先生に会えるチャンスです!(撮影:山下亮一)

1972年の施政権返還のときにも沖縄独立論はありました。「いいアイディアだな」と思いましたけれど、独立論はごく夢想的なものに過ぎませんでした。その時点での沖縄には自立できるほどの経済力がなかったからです。日米安保に基づく基地経済と、日本政府からの助成に依存しながら、同時に「独立」を要求することはできません。

でも、今の沖縄はもう経済的に自立できます。基地関連収入はすでに沖縄経済の5%にまで縮小しました。最大の産業は観光ですが、土地を基地が占領しているせいで、観光資源が活かし切れていない。基地があるせいで直線に道路を通せない、鉄道を敷設できない、美しい海岸が立ち入り禁止になっている、オスプレイやハリアーが轟音を立てて市街地の上を飛行している。

基地の存在が沖縄の観光地としての価値を大幅に損なっているのです。この障害が除去されれば、沖縄は東アジア最大のリゾートになる可能性があります。現に、沖縄には台湾や韓国や中国から観光客が続々と来ている。まず観光立国で財政基礎を築き、それを原資に研究機関や医療機関を集めて、沖縄を東アジアにおける「学びと癒やしの拠点」にする。それくらいのスケールのアイディアなら十分に検討に値すると思いませんか?

沖縄で連邦制がいけそうだとわかったら、他の地域も「州」として独立してみたらどうでしょう。今の道州制構想というのは完全に中央集権的な発想ですけれど、連邦制はそれとは発想が違います。

歴史に必然性はあったのか?

日本史では教えませんけれど、長崎港を領有していた大村純忠は領土を保全するために1580年に領土をイエズス会に寄進しています。荘園の実質的な支配者が名目的に中央の貴族や寺社に荘園を寄進して、その保護を受けるというのは平安時代からあったことです。純忠が、「強力なバック」を求めてイエズス会に自分の領土を寄進したのも同じロジックによるものです。

そのあと、豊臣秀吉が長崎を直轄領にしますけれど、たぶん「純忠みたいに日本中の大名が次々とイエズス会や教皇に領土を寄進したのではたまらない」と思ったからでしょう。秀吉の天下統一がなければ、戦国時代の日本は「このへんはポルトガル、このへんはスペイン、ここはイエズス会、ここはベネディクト会」というような状態になっていたかも知れません。日本人自身もマニラやシャム(タイ)に進出して街を作り、政治家になっていた時代ですから、戦国末期の日本は今よりずっと「グローバル」だったんです。

歴史上のさまざまな分岐点を経由して現在の日本はたまたまこういう形になっていますけれど、もののはずみでは「長崎がイエズス会領」で「沖縄が独立王国」であるような日本のかたちもあり得たのです。世界は今あるようなかたち以外にも、いろいろなかたちを取る可能性があった。なぜ、世界は今あるようなものになり、別のかたちにはならなかったのか?その分岐には必然性があったのか、それとも偶然の結果に過ぎないのか?そういう想像力の行使を怠るべきではないと僕は思います。

(文: 内田樹)

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