40代が熱くなる「大映ドラマカラオケ」の磁力 ドラマの名シーンを味わう絶妙な仕掛け

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1980年代の大映ドラマが持っていた、もうひとつの特徴は、現代のドラマが1クール3カ月が基本なのと比べて、2クール半年間に26話前後の放送がされていたこと。

「主題歌とドラマがセットで記憶されているのは、半年間に渡って放映されたから、というのもある。多くのドラマが最終回までに視聴率が25%近いヒット作品になっていた。翌日の学校では『昨日のスチュワーデス物語見た?』という話題で持ち切りになるなど、社会現象といえるものだった」(近藤社長)

確かに、堀ちえみの初主演作品である「スチュワーデス物語」は、彼女と、教官役の風間杜夫、そして「ヒーロー」同様に、麻倉未稀が歌う主題歌の「What a feeling~フラッシュダンス」の3点セットで記憶している人が多いはずだ。

世代を超えたコミュニケーションツールに

「カラオケを通じて当時の作品を思い出してもらうのは、ひとつのブランドとして大映ドラマを認知してもらえることにつながる。弊社の20代の女性社員でも、『ヒーロー』を歌えるほど。『銀座の恋の物語』のように、上の世代と下の世代がともに歌える曲、世代を超えて愛される曲として受け継がれていくと嬉しい」(近藤社長)

もちろん大映テレビにとっては、カラオケで楽しんでもらうことだけが狙いではない。すでに大映ドラマは、多くの作品がDVD化されている。カラオケを契機に、DVDを購入して、懐かしの映像に浸る「大人買い」を促すことにも繋がる。ちなみに大映ドラマは昨今話題のHulu、Netflixなどの動画配信サービスで楽しむことはできない。カラオケとはいえ、配信サービスに大映ドラマの映像が使われるのは初めてだ。

第一興商にとっての狙いは、カラオケに行くキッカケをもたらすことだ。成熟しきったかにみえるカラオケに、こうした新しい魅力を加えることで、カラオケからしばらく足が遠のいているような人々を引き寄せることに繋がる。

「カラオケは職場の仲間と連れ立って行くケースが多い。さまざまな世代が混じりあってひとつの場所で楽しむコミュニケーションの場でもある。ちょっと大げさだが、大映テレビは日本のひとつの文化。カラオケを通じて若い人たちに80年代の文化を継承するきっかけになればうれしい」(小倉さん)。このプロジェクトには、そんな思いも込められているのである。

高杉 公秀 フリーランス編集者

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たかすぎ きみひで

1966年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、出版社勤務。週刊誌や月刊誌の編集部を経て、2010年独立。フリーランスとしてさまざまなジャンルの記事執筆、単行本の企画を行う。

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