(第31回)<佐藤弘道さん>テレビのヒーローに憧れて体操を志した

●指示を待つ今の子どもたち

 子どもはみんな変わらないと思うのです。しかし、最近は一人っ子が多いし、大人が手を掛け過ぎている気がします。たとえば、僕の体操教室でキャンプに行くと、おやつにバナナが出ます。みんなで食べるというときに、一人だけ全然食べない子がいました。調子が悪いのかなと思って、何で食べないのか聞いたら、「剥いてくれないから」と言うのです。
 また、トイレに行かないで洩らしちゃう子がいて、何で行かないのか聞いたら、「だって先生、トイレに行けって言ってくれなかったじゃん」って言うんですね。こういう子は、常に親から「トイレは?」って先に言われているんです。自分が行きたいと思う前に声をかけられて、それで行動を起こしている。頭が鍛えられていないんです。
 僕の子どもの頃は、親は何もしてくれなかった。夏休みの宿題なんて、最後の一週間が一番きつかった(笑)。絶対に間に合わなくても、親は助けてくれないから、おじちゃん、おばちゃんとこに行って手伝ってもらっていました(笑)。

●最近の教育について思うこと

 教育の話は、十人十色。考え方も子どものおかれている環境もさまざまです。ただ、自分を振り返ってみると、とても恵まれていると思いました。地域が一帯となっていて、どこに行っても「おい、弘道」って呼ばれるんです。町内会でも学校でも。だから悪いことはできない(笑)。今の家庭の多くはあまり隣近所との付き合いがない。僕らの頃は、地域の交流も多かった。町内会の運動会があると、町内会の会長から電話がかかってきて、「明日来いよ」ってね。今はあまり聞かないですね。それから、お祭りがあれば必ず行かなきゃいけなかったし、だからこそ、自分も地域の一員なんだという実感もあった。
 今は子どもと接する仕事をしています。小さな子どもたちと触れ合うことで僕は、ものすごく変わりました。自分の子どもが生まれてからもまた変わりました。子どもってかわいいですよね。そして、自分の子どもはもっとかわいいです(笑)。
 親子でコミュニケーションを取ることは不可欠だと思いますが、何より大切なことは、大人が子どもを見ることです。「見て、触れること」。これが、何より重要なことだと思います。
(取材:田畑則子 撮影:戸澤裕司 取材協力:中川美穂)


佐藤弘道<さとう・ひろみち>
1968年、東京都新宿区生まれ、中野育ち。
日体荏原高等学校卒業後、日本体育大学体育学部に入学。大学卒業後は、世田谷区教育委員会の教育指導員を経てスポーツインストラクターとなる。1993年よりNHKおかあさんといっしょ第10代目「体操のお兄さん」となり12年間レギュラー出演。現在も同番組「あそびだいすき」に出演中。
2002年1月有限会社エスアールシーカンパニーを設立。子ども達の指導者のためのスポーツクラブを立ち上げ、文部科学省「子どもの体力向上推進事業」委員を務めた。現在、全国で親子体操教室や幼児体操教室、保育士講習会などを実施する他、テレビ、コンサートなど幅広く活動を行なう。第一保育短大、東京スポーツ・レクリエーション専門学校の講師を務める。著書に『子どもはぜんぜん、悪くない』(講談社)など。
コンサートやテレビ出演スケジュールはhttp://sato-hiromichi.com/(公式サイト)
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