「全盛期のソニー」を感じるヘッドホンの実力 エンジニアの魂が込められている商品

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そんな中でMDR-Z7は、おそらく実勢価格で10万円クラスの製品と互角の実力を持っている。高級ヘッドホンは極めて趣味性が高いため、もちろん好みもあるだろうが、この価格でこの品質はびっくり、あるいは控え目にいっても充分満足というヘッドホンファンが多いのではないだろうか。

実はこの製品の最終試作、“音決め(音のチューニング作業)”も佳境にはいったところで視聴したことがある。発売の半年以上前のことで、エンジニアは自信満々だったようだ。ところが聴き始めてみると、音場に閉塞感があり、音域バランスも悪かった記憶がある。まだ開発の初期段階と勘違いした筆者は、かなり辛辣なコメントを残した。

どうやら似たような感想はほかの人も漏らしたようで、そこからソニーのエンジニアはスピーカー部を多うハウジング形状を変え、また低域の質感を改善するためにちょっとしたポート(穴)を開けるなどの大改造を施したという。

エンジニアの魂が詰まったMDR-Z7

その後、似たような視聴を何度か繰り返して出来上がった音は、量産品にもきちんと反映されて商品を持つ人たちの手元に届いている。音質改善のために彼らが施した工夫は企業秘密でもあるため秘するが、細かな作業を積み重ね、それを量産する生産現場にフィードバックできる力が彼らにはある。

さてエンジニアの魂が詰まったMDR-Z7だが、“価格なり”という部分を差し引くと少し不満な部分も実は残っていた。それはヘッドホンケーブル。標準で用意されるヘッドホンケーブルは、中高域に癖が残り、その影響が音域全体に(ほんの少しではあるが)悪影響を及ぼしている。

もし手に入れたい、あるいはすでに入手済みという方は、ぜひともキンバーケーブル社とソニーが共同開発したオプション設定のケーブルに取り替えることを勧めたい。決して安価なオプションではないが、本体と一緒に開発された専用ケーブルによってMDR-Z7はハイエンド級の整った音を奏でてくれるだろう。

なお、本製品に限った話ではないが、スマートフォンのヘッドホン端子などでは実力を発揮できない点に注意して欲しい。本製品を楽しむには質の高いヘッドホンアンプが必要不可欠だ。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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