ニッポン宇宙開発元年--夢とビジネスの狭間で

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ここから先は、のりしろも限られてくる。H2A15号機の打ち上げ費用は85億円。14号機に比べ24億円も安く上がったが、15号機には、14号機と違い、4本の固体ロケット補助ブースターが付いていない。この構造上の違いで十数億円の差。

当然、民営化による合理化は進んでいる。従来は、工場と種子島の射場でそれぞれ1回実施していた機体総点検を種子島に絞り、購入品の多重チェックも簡略化した。だが、その節減効果はせいぜい数千万円。

H2Aは、種子島という射場の不利も抱えている。アリアンの射場は赤道上の仏領ギアナだが、種子島から赤道上の静止軌道に乗せるには、28・5度の軌道傾斜度を修正するために、余分の燃料がいる。

三菱重工は半ば開き直っている。「真っ向勝負できない。政府支援がないと生き残れない」と淺田部長は言う。「われわれは、もともと、商業のためにやっているのではない。日本が宇宙に行く自在性、自由度を保持するための運用を任されている。だから(不利でも)種子島から離れない。海外と組むこともありえない」。

だから支援を、である。政府のロケット打ち上げ需要は年1機から4機までブレる。つねに最大4機分の能力を保持せよ、と言うなら、たとえば、国の需要が3機のとき、1機分の商業受注に政府支援があっていい。現に、欧州はアリアンに5年で9.6億ユーロ、1機当たり50億円の補助金を与えているではないか--。

ロケット写真:(C)三菱重工業

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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