グレゴリー・ガイエット JPモルガン証券社長兼CEO--毒性資産の処理ほぼ終え、不況下の不良債権が焦点

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--商業・投資銀行の役割は危機後にどう変わってくるのですか。

一部の金融機関には専門特化するところがあるだろう。しかし、そういう金融機関ですら、より安定性の高いビジネスを含む幅広い業務を展開する可能性が高まるのではないだろうか。いわゆる商業銀行業務をもっと幅広く強化する銀行もあるだろう。そうはいっても、全般的にビジネスミックスとかラインナップを変えることはないだろう。顧客の関心に基づき、ビジネスの力点の置き方は変わってくるかもしれない。

--証券化市場の健全性・透明性を取り戻すには。

非常にストラクチャーが複雑で高度な証券化商品は、マーケットに戻らないだろう。基礎的なもの、証券化の信用を高められるものは、いいパフォーマンスを持ち続けられるだろうから、時代や環境が今後好転すれば戻ってくる。この両者を明確に峻別すべきだと思う。

--シティは実質国有化されましたが、JPMは今回の危機下で最も影響を受けていない。いったい何が違ったのでしょうか。

大恐慌のときも、JPMは損失を自分の帳簿の中で処理できた。今、失業率が上昇し住宅価格が下がる、最悪のシナリオを想定しても、必要とされる損失処理費用以上の資本を持っている。資本の質、貸倒引当金は十分あり、毎四半期欠かすことなく、黒字を確保できている。

相対的にJPMは、リスクマネジメントの実践が強力。単に統計的な確率論だけではなく、人間の判断を重視しているからだ。フロントラインのトレーダーや実際のビジネス部隊と、リスクマネジメントの担当者とが、合意しないかぎりはリスクテイクの決定はしない。また、トップのマネジメントが非常に深くリスクマネジメントにかかわっている。直接、トレーダーやリスクマネジャーと議論をして、リスク評価について適正かどうかを議論している。

最後に幅広いビジネス、奥行きの深さがリスクマネジメントに活用できる点だ。リテールの世界で行き過ぎがあることを理解しているので、投資銀行でアグレッシブなものを引き受けないという判断もできる。

Gregory Guyett
1985年プリンストン大学人文学部卒業、モルガン銀行(在米国)入行。90年JPモルガン・セキュリティーズ・インク(在米国)不動産プリンシパルインベストメント・ヴァイスプレジデント、98年同投資銀行部自動車部門統括、2007年9月より現職。

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