グレゴリー・ガイエット JPモルガン証券社長兼CEO--毒性資産の処理ほぼ終え、不況下の不良債権が焦点
--各国そろっての公的資金注入は、資本主義や自由主義経済に禍根を残すことになりませんか。
資本主義の歴史において、政府は何らかの役割を担ってきた。政府が民間企業への関与を増やしたりすることは、これまでにもあった。米国の歴史を見ても、大恐慌のときにSEC(証券取引委員会)が、S&L(貯蓄貸付組合)危機では、RTC(整理信託公社)が設置された。
金融システム全体の健全性を維持する必要性のほうが、つねに民間がすべてを所有しておかないといけないという基本的な原理よりも、より重要だと考えられて対応が行われてきたのだ。そして、政府の介入は一時的、一過性のものだという原則は維持されてきた。
政府のアクションと自由主義経済の原則とは別物。今回は、問題を解決するために政府が取るべきアクションのスピードが、むしろ遅すぎたという見方すらされている。
--4月2日の金融サミットで議論される新しい金融システム、金融規制において望ましい施策は。
第一に各国の規制当局間の協力が高まってきたことは意義深い。各国の規制当局にとって、カウンターパートはどんな考え方をしているのかを把握することで、グローバルな金融機関に規制の裁定を起こさせないようにすることは重要だ。第二に、現在は規制対象の外に置かれている金融機関や金融システムには、よりよい規制を導入していくべきだ。米国では証券会社もFRB(連邦準備制度理事会)の規制の中に入った。このような規制の枠組みは拡大していくことになるだろう。
第三は、規制が非常に厄介な国の場合は簡素化が望まれる。米国もそうだが、国や州など複数の規制当局が金融機関に関与している。第四はCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)など相対ベースの取引については、取引所を開設することでシステム全体のショックアブソーバーを提供できる。危機後の規制体系を考えるうえでは、規制当局者はこうした四つの点に注目することになろう。