2016年の世界経済は米国次第で大きく変わる 「独り勝ち」米国経済が傾いたらどうなる?
ペルシャ湾を挟んで向かい合うイランとサウジアラビア間の緊張が高まっていることは憂慮すべきだが、中東地域の対立は珍しくない。通常はこうした対立が起きると、原油価格が高騰して世界経済に波及するが、今はそれと反対のことが起きている。
原油価格は昨年、1バレル53ドルほどから37ドルに低下し、現在は34ドルを割り込んでいる。上海株式市場の上海総合指数は昨年6月から急激に下落し、2016年の取引初日に急落したものの、昨年8月後半の水準は上回っている。
この2年ほど、経済成長が鈍化しているのは中国だけでなく、ブラジルやナイジェリアなど多くの新興市場も同様だ。ヨーロッパと日本はわずかな上昇にとどまり、カナダのように好調だったところも商品の過剰供給の影響が出ている。
こうした暗い状況を背景に、米国経済の見通しは非常に前向きだ。国際通貨基金(IMF)は2016年に2.8%の成長を予測している。米国の株価指数は、世界的には急落し、石油会社は大きな打撃を受けているにもかかわらず、9月の水準よりも上回っている。
米国も逆風にのまれたら
しかし、世界が混乱する中で米国が経済的、政治的に「安定の島」として機能することには、根本的な疑問が二つある。
ひとつは、もし状況が変わったらどうなるのか。もうひとつは、状況が変わらなければどうなるのか、ということだ。
前者は、グローバル経済への逆風が強すぎて米国も巻き込まれるというシナリオだ。
すでに石油生産会社とそのサプライヤーには影響が及んでいる。米国の製造業はドル高の痛手を受けており、そのことが輸出品の価格を押し上げている。それは、成長する米国とそれ以外の国々とのミスマッチの結果だ。