2016年は始まったばかりですが、7日午後3時の時点で日経平均株価は1万7700円台に落ち込み、ドル円相場は117円台に突入する場面も見られています。日本経済新聞の元旦の記事には、毎年恒例の経営者による株価予想が掲載されていますが、20人の名だたる経営者のうち、すでに18人が株価の下値予想を外している状況にあります。
大企業の経営者の方々の予想でいつも不思議に思うのは、なぜ金融大手やシンクタンクの予測に依存しすぎているのかということです。まっとうな企業の経営者であるならば、株価や為替を予測する時に、金融大手やシンクタンクなどの予測は当てにならないということは、これまでの経験で十分にわかっているはずです。
昨年夏に日本株を売却したオイルマネー
日本株に大きな影響を与える海外投資家の動向については、長期的に腰の据わった資金を扱っている投資家ほど、世界の株式市場の先行きを慎重に見ている向きが多いという事実があります。昨年7月の時点ですでに、ウォール街の早耳筋の銀行投資家たちは米国株の上昇は望めないと考えていましたし、8月のチャイナ・ショック以降は米国株だけでなく、日本株や欧州株の上昇余地も乏しいと考える欧米投資家が増えてきていたのです。すなわち、長期的な視点に立つ投資家ほど、中国リスクがいつ蒸し返されるのかを警戒していたわけです。
過去数年間、日本株を大幅に買い越してきた海外投資家のうち、長期投資家の代表であるオイルマネーは昨年8月~9月に日本株を大量に売り払いました。その証拠として、産油国の政府系ファンドとされる大株主の名前が、数々の日本を代表する企業の上位株主から姿を消しています。
中東産油国の投資家は欧州経由で売買をすることが多く、世界の株式市場が昨年8月下旬以降に大荒れとなった背景には、オイルマネーの売りが大きな要因のひとつであったのは間違いないでしょう。実際に日本の株式市場でも、海外投資家は2015年9月に現物株を2兆5772億円売り越しましたが、そのうち欧州の投資家の売り越し額は1兆8009億円と過去最大の規模に達していたのです。
私は長期投資家であるオイルマネーが戻ってこない限り、日経平均株価が2万円を超えて上昇するのは難しいと見ております。オイルマネーは世界の運用資産の1割程度を占めるほどの規模に達し、昨年の夏までの日本も含めた先進国の株式市場の上昇を支えてきたからです。
ところが、原油価格の低迷が長期化し、産油国の財政を圧迫し始めている中で、再びオイルマネーが株式市場にすぐに戻ってくるとは考えにくいのではないでしょうか。米国が2016年にも原油の輸出を開始するだけでなく、イラン産原油の輸出増が供給過剰に拍車をかけていくので、中東産油国は原油価格が30ドルを割り込むところまで覚悟しているのです。
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