私たちは株式市場を予測するうえで、昨年のチャイナ・ショック以降、市場の構造が変質してしまったことを認識しなければなりません。「昨年3月のECBの量的緩和以降の株価上昇」と「昨年10月以降のECBの追加緩和観測による株価上昇」のあいだで明らかに異なるのは、昨年3月の量的緩和開始後では長期および短期の双方の投資家が株式の買い増しを進めていたのに対して、10月以降の追加緩和観測では短期の投資家しか積極的に株式を買い進んでいなかったということです。
もともとECBの追加緩和は2016年の投資アイデアとして想定されていたものですが、それが2015年中に消化された挙句、長期の投資家の資金があまり戻ってきていないという事態を考えると、たとえ2016年に日銀の追加緩和観測が台頭し、実際に追加緩和が実施されたとしても、昨年10月以降の日本の株式市場と同じく短期筋の資金しか入ってこない可能性が考えられるわけです。
必然的に株価の振れ幅は大きくなる
オイルマネーに代表される長期投資家が減少した代わりに、短期筋の投資家の市場占有率が増えたのですから、これからは短期的に株価の振れ幅が大きくなり、その大きい振れが1年に何回も繰り返される可能性が高まってきているといえるでしょう。
さらに欧米の経済メディアでは、10月頃からアベノミクスは失敗したと見始めているところが増えてきています。当然のことながら、3年近く経っても経済の好循環は実現していないですし、大企業の高収益ばかりが際立ち、消費が一向に増えていない事実を客観的に評価しているからです。
安倍政権が経団連に対して、2015年度以上の賃上げと設備投資額にノルマを課そうとしているのを見て、欧米メディアには安倍政権が自らの経済失政を認めているのと変わらないと映ったのではないでしょうか。そのように考えると、欧米投資家にとって2016年に日本株が力強く上昇する投資アイデアは、今のところ存在しないように思われます。
ここまでをまとめると、2016年の株式市場は短期筋の動向によって下方向に振れるだけでなく、振れ幅が激しくなるということです。株価が下落した後の講釈は、いくらでも後付けできるのです。これは、円相場についてもまったく同じことがいえます(『やっぱり2016年は円高トレンドの1年になる』(2015年12月30日)の記事を参照してください)。
実態経済や金融市場を予測するうえでは、経済以外のジャンルにも精通し、自分の軸となる考えを持つことが重要です。そして、その軸を形成するためには、「物事の本質は何なのか」「歴史的に見てどうなのか」「ほかのジャンルの知識から見てどうなのか」といったことを普段から考えるようにする必要があるのです。
次回は、自分の軸となる考えを持っていれば金融大手の言動に惑わされないという典型例を、私自身の経験談から述べたいと思っております。
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