「話がわかりやすい」人は一体何が違うのか

理系作家がそのナゾを解き明かす

一方で、「砂浜に穴があってさ、その穴から変なのが出てきて……」と言われたらどうでしょう。

確かにこの会話からも、砂浜に穴があいている「絵」は思い浮かびます。
しかし、次の「変なの」は難しい。

「変なの」といわれても、絵を描くことができません。気になるあなたは
「変なのってなに?」「なに色?」「大きさは?」と自分の脳内で「絵」を描くために相手に質問を投げかけるでしょう。記号が補足され、詳しい「絵」が描けたところで「へー、わかった!」となるのです。

つまり、「わかりやすい人」とは……相手の脳内に素早く「絵」を描かせてくれる人です。

逆に、なかなかうまく「絵」を描かせてくれない人が、「わかりにくい人」ということ。その意味では、書店で見掛ける「よくわかる」「マンガでわかる」というタイトルの本は、脳内に素早く「絵」を描く手助けをしてくれるのだといえそうです。

「わかりやすい伝え方」は、ソシュールの言語学に学べ

私に「わかりやすさとは、脳内に絵を描かせることだ」と気づかせてくれた人がいます。フェルディナン・ド・ソシュールというスイスの言語学者です。彼は「近代言語学の父」といわれ、「シニフィエ」と「シニフィアン」という言語学用語を定義しました。

たとえば、あなたが海について話しているとします。

あなたの頭にぼんやり浮かんでいる海のイメージや概念が「シニフィエ」。「海」「うみ」「Sea」という具体的な文字や音は「シニフィアン」です。

1つ例を出しましょう。

あなたの目の前にいる「犬」そのものは物理的な存在ですよね。で、あなたが思い浮かべている犬の映像や鳴き声、つまり頭の中の犬のイメージが「シニフィエ」です。これが「犬」「dog」といった言葉(文字・音声)になると「シニフィアン」と呼ばれます。「犬」のイメージは変わらなくても、犬を見る人によってその呼び名は、「犬」「dog」「ワンワン」と変わりますよね。

言葉というのは便利です。現実の海や犬が存在しない場所でも、言葉を使えば、「昨日、海で犬と遊んだ」という思い出話ができます。それだけ、言葉というのは重要なのです。

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