「嫁姑問題」はコトの善悪の問題ではない 義父母にこき使われる悲運を嘆く前に

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いつも佐代子さんの失敗や揚げ足を取っては、それをネタに話を咲かせているような趣味の悪い姑たちに、彼女は親しみを感じたことがなかったので、「愛情があれば」と愛情まで強要されていることに、戸惑いどころかむしろ恐怖を抱えて、結婚生活は始まりました。

そして佐代子さんの夫の口癖は、「嫁の代わりはあっても親の代わりはない」というものでした。

嫁姑問題は典型的な家庭問題

これは戦後の夫婦の話ではありません。つい最近のお話です。そんな佐代子さんの夫婦関係や義理の親子関係は、何かにつけていつも決して穏やかなものではありませんでした。

しかし彼女の夫やその両親に都合のよかったことに、佐代子さんの辞書には「離婚」という言葉がありませんでした。彼女は置かれた場所で精いっぱい生き、子育てをする以外に道はないという考えの持ち主だったのです。

夏の海辺での宿泊や冬の温泉旅行も、いつも義理の両親と一緒で気を使い、息を抜ける日がありませんでした。しかしある年に、遠方の夫の親友の結婚式に、夫婦で一泊かけて出席しました。もちろん舅姑の食事も万端に整えての外泊です。近所には夫の兄夫婦たちや姉がいます。

ところが一泊して帰宅すると姑は、風邪を引いてそれらが食べられなかったというのです。誰がみても仮病なのに、「私が飢え死にしてもいいと思って出かけたのだろう」と大事件に発展しました。息子の友人の結婚式に乗じて、嫁が息抜きしたことが許せなかったのです。

佐代子さんはそんな「大事件」を考えると恐ろしく、極力親を置いての外出や外泊を、夫の誘いがあっても控えたそうです。

佐代子さんの舅姑に対する世話は、半端ではありません。あなたのお姑さんのようにささいなことでも大げさにしつこく騒ぐので、1時間かけて嫌味を言われるくらいなら、2時間かけて先に準備して世話する方が家庭平和とばかり、彼女は寝る時間を削るようにして生活の全般に気を配りました。

姑たちに嫌味を言われたり、姑のうそや大げさな言い草を信じて自分が彼らからあざ笑われるのが煩わしく、口封じのために外見甲斐甲斐しく、舅姑を世話したようなものだったそうです。

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