【産業天気図・ガラス・土石製品】ガラスは欧州減速で「曇り」に後退、セメントは燃料高さらに進み「雨」降り続く
ガラス業界の2008年度は、板ガラス事業を牽引した欧州の景気減速影響が直撃しそうだ。国内市場も低迷が続くことから、各社の収益はまだら模様ながら全般的には前回(07年12月時点)の「晴れ」から「曇り」に悪化する。一方セメント業界は、建築基準法改正の影響で停滞している国内建築需要の「回復が見えないのに加え、燃料の石炭価格の高騰が重なり、前回予想から変わらず「雨」が続く。
欧州の設備投資活況で、欧州に有力子会社を持つ旭硝子<5201>や06年に英国ピルキントン社を買収した日本板硝子<5202>は、07年度は建築用ガラス好況を満喫した。だが、既に需要はピークアウトしており、汎用品を中心に単価も徐々に下がっているという。両社とも新たな需要地域をロシアや東欧など欧州の東寄りに求めているものの、前年度並みの利益を享受できるまでには届きそうもない。
また国内は、住宅着工の減少で建築用ガラス市況が弱含んでいたところに、昨年6月の建築基準法改正に伴うビル、マンション建設低迷の影響が07年度後半から出ている。加えて、燃料高による価格転嫁は進んでいない。各社は昨年末から値上げを打ち出しており、お膝元の立て直しに躍起だが、その浸透具合は不透明だ。国内主力で07年度はガラス事業が赤字だったセントラル硝子<4044>は、08年度も同様に厳しい状況となる。
板ガラス主力の日本板硝子、セントラル硝子に比べて、近年の稼ぎ頭である液晶用ガラスを擁する旭硝子は、比較的強みを発揮する。08年度は夏頃に韓国で液晶用窯1基が動くほか、同年後半に兵庫・高砂工場にも新窯1基が稼働。これはシャープが大阪・堺に建設する液晶テレビ新工場に供給する世界最大の10Gと呼ばれる巨大ガラスを生産する予定だ。旭硝子の08年度(12月期)会社計画は、欧州の板ガラス減速や円高影響などから営業利益を前期比微増としているが、液晶用ガラスの需給はひっ迫していることから、上振れの可能性もある。ディスプレー用ガラス専業の日本電気硝子<5214>も、液晶用ガラス好調で、営業益は続伸の見通しだ。
一方、セメント業界は建築基準法改正影響で冷え込んだマンションや住宅などの建築需要の回復待ちとなる。だが燃料となる石炭の価格高騰が07年度以上となることが収益を大きく圧迫する。廃棄物などのリサイクル原燃料使用による合理化も加速するが追いつかない。セメント各社は燃料高を転嫁した値上げを進めている。従来の商慣習では口頭で取り交わしていた価格交渉を、この春から書面形式にすることで、厳格な値上げを実施する意向。しかし、その成否は不透明なうえに、値上げ分だけで需要低迷と燃料価高騰を凌げるか不確定要素が大きい。住友大阪セメント<5232>や太平洋セメント<5233>
の08年度営業利益は連続減益になりそうで、「雨」が続く。
【鶴見 昌憲記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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