MRJが4度目の納入延期、今回の理由は何か 三菱重工業、開発費3000億円の回収に暗雲
初飛行の感動からわずか1カ月半で、三菱重工業の小型旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)が再びピンチに立たされた。最新状況を踏まえて今後の開発スケジュールを再検討した結果、実施すべき試験項目の追加・見直しなどが必要となり、初号機の納期が守れなくなったからだ。
これまで2017年4~6月の納入開始を目標にしていたが、2018年半ばへと約1年ずれ込む。最初の顧客であるANA(全日本空輸)、2番目の米トランス・ステーツ航空への納入に支障が出る。飛行試験の開始で開発の進捗を世界にアピールし、受注に弾みが付くと期待された矢先だけに、「残念としか言いようがない」と関係者らも落胆を隠せない。
「想定した計画に甘さがあった」
MRJは三菱重工が傘下の三菱航空機(本社:愛知県豊山町)を通じて開発を進める、70~90席クラスの小型ジェット旅客機。1965年に就航したプロペラ式の「YSー11」以来となる、半世紀ぶりの国産旅客機として大きな注目を集めている。その開発は難航を極め、2008年の開発正式着手から7年半の年月を経て、ようやく11月11日に初飛行へこぎ着けたばかりだった。
「(三菱重工が開発・製造の中心的役割を果たしたYSー11以来)50年ぶりの旅客機開発で知見が足りず、想定したスケジュールに甘さがあった面は否めない」ーー。12月24日に愛知県で開いた記者会見の席上、開発責任者である三菱航空機の岸信夫副社長はこう認めざるを得なかった。
同社によると、強度・耐久性や落雷などの地上試験内容を拡充するため、想定していたよりも、地上実機試験に多くの時間がかかるという。「機体の完成度と信頼性をより高めるには、(飛行試験と並行して行う)地上での試験をもっと増やしたほうがいいと判断した」(岸副社長)。また、飛行試験が一定段階まで進んだ時点で試験結果を設計にフィードバックし、機体改修を集中的に実施する計画だが、そのための期間も従来より長めに設定し直した。
三菱は空港離発着や飛行空域の制限が少ない米国シアトルをメイン拠点として飛行試験を進める予定で、飛行データ解析や設計修正を担当する米国開発拠点を2015年8月に開設。現地で採用した旅客機開発の知見を有する外国人エンジニアなどからの指摘を踏まえ、全体の作業工程を見直したという。
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