MRJが4度目の納入延期、今回の理由は何か 三菱重工業、開発費3000億円の回収に暗雲

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ただでさえ、エンブラエルには実績と顧客基盤があり、トラブル時の対応や交換部品供給などエアラインに対するサポート体制のインフラも確立している。MRJの最大の武器だった機体性能の優位性が薄まり、かつ、市場投入時期もさほど大きな差がなくなれば、新規参入の三菱がエンブラエルとの販売競争に勝つのは一段と難しくなる。

最悪のシナリオは、2018年半ばの納入開始も難しくなった場合だ。なにしろ、肝心の飛行試験はまだ始まったばかり。延べ1500回、累計2500時間に及ぶ飛行試験を行い、それらの膨大なデータによって機体の安全性を客観的に証明し、国から設計の安全認証(型式証明)を得てようやく開発作業が完了する。この認証取得こそが、旅客機開発における最大の難関だ。 

飛行試験には大小さまざまなトラブルがつきもので、経験豊富な米ボーイングや欧州エアバスでも、最新鋭機では初飛行から納入開始まで20カ月前後を要している。同じリージョナル機に新規参入した中国COMACに至っては、2008年の初飛行から7年かかった。

さらに納期が遅れるリスクも

会見後の囲み取材に応じる三菱航空機の森本浩通社長(撮影:尾形文繁)

新たな納入開始目標として設定した2018年半ばまで2年半。従来の約1年半から伸びたとは言え、三菱にとってハードルが高いことは変わらない。三菱航空機の森本浩通社長自身、「いろんなリスクを織り込んで日程を見直したが、旅客機開発には予見しづらい部分も多い。2018年半ばの納入開始を確約できるかというと、正直、断言は難しい」と、さらに納期が遅れるリスクを否定しなかった。

MRJ事業は、三菱重工のまさに威信と社運をかけた一大プロジェクトである。開発の長期化で、総開発費は3000億円規模にまで膨張。さらに設備投資や運転資金も含めると、納入開始までの先行投資額(投下資本)は軽く4000億円を超える。巨額の投資回収と累積事業赤字の解消には最低でも1000機近い販売が必要と見られ、そのためにもこれ以上の大幅な遅延は絶対に許されない。

果たして、すべての開発作業を期間内に終え、今度こそは2018年の納入開始スケジュールを守れるかーー。半世紀ぶりの国産旅客機となるMRJを真に“離陸”させるため、三菱の産みの苦しみと長く厳しい挑戦が続く。


 

渡辺 清治 東洋経済 記者
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