企画を通せない人に伝えたい「プロの勘所」 累計6000万部売った編集者の「通す技術」
僕は「読みやすさ」に気を配って企画書を書いています。たとえば、僕が以前、自分が所属する小説レーベル「電撃文庫」の企画書を作ったときは、まずレーベルコンセプトを説明し、次に対象とする想定読者(ターゲット)、そしてタイトルラインナップや歴史、最後に具体的なメディアミックスの実例……といった順番でまとめました。
これは、「読み手の思考の半歩先」を意識した結果です。まずレーベルコンセプトから始めたのは、キャッチコピーなどを使って印象強くレーベルを紹介できるからです。次に、「そのキャッチコピーは誰に伝えるべきか」という思考から、想定読者の説明をしました。
そして「その読者が実際に読んでいる作品例」として複数の文庫タイトルの紹介し、「それら作品の具体的な盛り上がり」に繋げてメディアミックスの実例を記述しました。読み手が「ひとつ知ったらその次に知りたくなること」を意識して項目の順番を組み立てると、心地よい「読みやすさ」を持つ企画書になります。
形式より何より、「やりたいこと」を書く
僕は、よく他社から、担当作品の漫画化オファーや映像化オファーといった、メディアミックスの企画書をもらいます。その中には、読みやすい企画書と読みにくい企画書があるのですが、多くの場合、読みやすい企画書=よい企画書です。
よい企画書は、まず冒頭に、「キーワードは○○!」とか「この物語は××で売っていく」といった具合に、必ず「やりたいこと」が書かれています。
そんな身もふたもない記述が冒頭から書かれていると、「お行儀が悪い」印象を受けるかもしれません。ですが、だらだらと前書きやら基礎知識やらが最初に書かれている企画書のほうが、むしろ質がよくないことが多いのです。
というのも、たくさんある企画書を読んでいく際、すべてのものを最初から最後までをじっくり精読でき、総合的に判断できればベストですが、どうしても時間が足りず、かいつまんで読むことしかできない状況もあります。そんなとき、結論が最初に書かれている企画書は、そこで内容の大目的がわかりますし、その目的を達成するための詳細がこの後に書かれているということも類推できます。
企画書に行儀のよさは必要ありません。明確な意志をより迅速に伝える手段と考えるとよいでしょう。
お見合い写真やそのプロフィールなら、悪いところはなるべく隠して相手方に渡したくなるところです。企画書も同じく、「絶対に通して欲しいから、よいことしか書かないでおこう」と考えてしまうものでしょう。しかし、それは逆効果です。「見栄え良く」着飾っていることは、判断する側も見抜くからです。
僕は年々、企画書を読む機会が増えていますが、読む数が増えれば増えるほど、「よいことしか書いていない書類」はどこか納得できない、腑に落ちない感覚を覚えます(もちろん本当に欠点のない企画もありますが)。
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