なぜ、1%が金持ちで、99%が貧乏になるのか? 《グローバル金融》批判入門 ピーター・ストーカー著/北村京子訳 ~金融危機の再発防止に通貨発行特権の廃止提言

なぜ、1%が金持ちで、99%が貧乏になるのか? 《グローバル金融》批判入門 ピーター・ストーカー著/北村京子訳 ~金融危機の再発防止に通貨発行特権の廃止提言

評者 高橋伸彰 立命館大学教授

 1%の金持ちは99%の貧乏人より努力したわけでもなく、才能があったわけでもない。著者によれば「彼らは、収益や賞与をせっせと自分たちの懐に入れつつ、いざ危機が襲ってきたときには、損失を国庫へと移してしまえることを知っていた」だけである。そんな彼らとは、いったい誰か。その正体をあぶり出したのが本書である。

本書の圧巻は取引を円滑にする「便利な道具」だったおカネが、いかにして人びとの強欲を満たす「手品のタネ」に変身したかをめぐる得心できる解説と、刺激的な解決策にある。変身の画期はおカネを預かるだけではなく、それを貸付けに回して利益を稼ぐ錬金術、すなわち信用創造の発明にあった。預金者にとっては利息を得られても、預けたおカネを銀行が他人に貸付けるのは心配のタネだ。だから、政府が銀行の経営や資産内容をしっかりと監督・検査して、何かあれば最後は守ってほしいと預金者は願っている。

しかし、倫理よりも損得が優先される資本主義の下では、政府に従うよりも、その目を逃れておカネを稼ぐ動機のほうがはるかに強い。それに一層の拍車を掛けたのが冷戦終焉によるグローバル化の進展と、新自由主義の台頭による金融分野の自由放任だった。本書によればレバレッジを濫用したヘッジファンドによる通貨投機や、銀行による貸付債権の証券化、およびその組成・転売という金融の暴走の原因は、グローバル化と自由放任にあった。その帰結が2008年の国際金融危機であり、ダメージを受けたのは1%の金持ちではなく、99%の貧困層だったと著者は言う。

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