首相政治の制度分析 現代日本政治の権力基盤形成 待鳥聡史著 ~首相の権力基盤を制度論から考える
現代政治の最大の問題点は重要課題について回答を出せない「決まらない政治」である。連続短命首相、衆参ねじれの常態化などが要因といわれる。
人々が「無力政治」に不満と不信と不安を募らせている今、首相による政府の運営、権力行使のあり方を「首相政治」という概念でとらえ、その本質を論究する学術書が登場した。著者は比較政治学や現代アメリカ政治を専門とする政治学者だが、専門家や研究者だけでなく、一般の読者も強い関心を寄せるテーマで、現代的意義は大きい。
「首相政治」について、形成の歴史、展開の実態、著者の見解・提言という3部構成で論述している。「首相政治」は明治憲法下では基盤が確立せず、現憲法での議院内閣制の採用で政治的資源は増大したが、衆議院の中選挙区制が妨げとなる。1990年代の選挙制度改革と内閣機能強化でウェストミンスター型議院内閣制に傾斜し、「党首としての権力と首相としての権限や資源が重なりあうことで、日本の首相は従来よりも大きな影響力を持つアクターとなった」(第五章)というのが著者の基本的姿勢とみられる。
日本では権力分立のほかに、首相と与党議員などの不一致による「目的の分立」が顕著で、多くの拒否権プレーヤーが存在するが、その中で中曽根康弘、小泉純一郎の両元首相が「大統領的首相」と評された。