首相政治の制度分析 現代日本政治の権力基盤形成 待鳥聡史著 ~首相の権力基盤を制度論から考える

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著者は「自らも認めていたように中曽根は大統領的首相」だが、小泉氏は90年代の改革による「制度構造を徹底して活用した首相」(第五章)という見方に立ち、個々の指導者の資質に重点を置く指導者論とともに首相の権力基盤を制度論から考える視点の必要性を唱える。

であれば、小泉時代と同じ制度構造なのに、なぜ短命首相が連続するのか。「制度が変わったにもかかわらず、ではなく、制度が変わったがゆえに、短命で奇妙な辞め方をしている」と分析し、「制度的基盤の強化によって首相は進退についても自律性を高めた」が、「権力を行使できない首相が少なくないのは、政党内部でのガヴァナンスや参議院の存在といった、1990年代以降の制度改革が及んでいない領域が制約要因」で、「首相を取り巻く新しい環境に適合的な政治家を得られていないため」(第五章)と説く。

民・自連携を選択して「政党内部でのガヴァナンス」と「参議院」の二つの壁に挑んだ野田佳彦首相は、小泉氏以来の「新しい環境に適合的な政治家」という評価を得るのか、それとも「制度が変わったがゆえに短命」の同類首相で終わるのか。そこを読む場合のテキストとしても示唆に富む一冊である。

まちどり・さとし
京都大学公共政策大学院・大学院法学研究科教授。専攻は政治学、比較政治論、アメリカ政治論。1971年生まれ。京都大学法学部卒業。同大学大学院法学研究科博士後期課程退学。大阪大学大学院助教授、京都大学大学院助教授などを経て、2007年より現職。

千倉書房 4095円 214ページ

  

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