【産業天気図・海運業】「バラ積み船」運賃市況が依然高水準で、今・来期とも「快晴」持続

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海運業界では、鉄鉱石、石炭、穀物、木材などの乾いた粗原料を運ぶ「バラ積み船」運賃市況の”暴騰”により、大手・準大手を中心に利益水準の大幅な上振れが続いている。2007年度後半の天気は前半に引き続き「快晴」。08年度も利益を大きく下振れさせる懸念材料は現時点では見当たらず「快晴」を継続する。
 バラ積み船運賃の代表的指数であるBDI(バルチック・ドライ・インデックス、1985年=1000)は、07年10月に1万ポイントの大台に初めて乗せたあと、11月には一時1万ポイントを割り込み、下期業績の下振れ要因となる可能性が懸念された。しかし、バラ積み船の実際の運賃は、大手3社(日本郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<9107>)がこぞって今期通期業績の増額修正を発表した中間決算発表時点(10月末)の各社想定に比べれば、まだかなり上振れているのが実情だ。
 前07年3月期は大手各社で軒並み部門赤字となり連結業績の足を引っ張ったコンテナ船も、バラ積み船には及ばないが堅調だ。北米向け航路は下期にかけて米国景気減速の影響が心配されるが、欧州向け航路は欧州景気の底堅さを反映して船舶需給が逼迫し、4月、7月、10月の運賃値上げもほぼ想定通りに成功。通期での部門黒字の確度が高まっている。これまで運賃市況が低迷してきたタンカーも、代表的指数であるWS(ワールドスケール、基準運賃=100)が冬場の北半球での暖房需要期入りに合わせて、大手各社の想定を大きく上回る上昇ぶりを見せている。原油タンカー(中東−日本)のWSは夏場には50ポイント前後で低迷していたが、10月以降急上昇し、足元では200ポイントに接近する場面も見られる。
 好調な海運業界にも、もちろんそれなりの懸念材料はある。ドル建て収入比率が高いために、円高・ドル安は売り上げ目減り要因であり、原油高騰に伴う燃料油価格(C重油が一般的)の上昇もコストアップ要因となる。ただ、現状ではバラ積み船運賃の市況暴騰で各社の利益水準が大きく上がってしまったため、多少の円高や燃料油高の影響は吸収されてしまっている。07年度下期の業績は、運賃市況が多少下振れたとしても、上期の利益を大きく上回る可能性が高い。「四季報速報」では、海運大手3社の07年度通期業績は、10月末時点での会社側予想に対して一段の上振れとなる可能性が高いと見ている。
 2008年度は運賃市況次第で不透明な部分があるため、前回(9月時点)の天気予想は「晴れ」としていた。しかし、バラ積み船のみならず、従来はまったく期待されていなかったタンカーの運賃市況が回復基調を見せ始めたことや、大手各社が比較的低船価の時期に発注した新造船の竣工がピークとなることなどから、利益水準は高原状態が続きそうだ。現時点では「快晴」持続と見ている。
【大滝 俊一記者】

(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部

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