【産業天気図・鉄鋼】建築基準法改正で雲行き悪化。来08年度も原料次第で先行き不透明に
鉄鋼業界の雲行きは、夏場を境に確実に悪化している。
元凶は6月の建築基準法改正だ。建築確認基準の厳格化をうたった同法改正によって、建築着工が急激に減少。7月から4カ月連続で前年同月割れが続いている。秋口には鉄鋼各社は「年内には収束する」との楽観的な見方が支配的だったが、足元は「07年度いっぱい、場合によっては08年度前半も影響が残る」(大手幹部)と深刻の度を深めている。07年度後半の天気は、前回(9月時点)の「晴れ」予想を変更、「曇り」とする。
もっとも、大手高炉への影響はそれほど大きくなさそうだ。建材減産分は輸出に仕向ける一方、国内メーカーが得意とする自動車や造船等向けの高級鋼の需要は高水準が続く。住友金属工業<5405>と神戸製鋼所<5406>は、税制変更に伴う減価償却負担の増加から、今07年度は見かけ上減益となる見込みだが、実質的には増益基調を維持。新日本製鉄<5401>、JFEホールディングス<5411>の大手2社は、高級鋼中心の増産に加え、2年ぶりの値上げ決着となった自動車鋼板をはじめとした販価改善が寄与し、最高純益を更新する見込みだ。
むしろ、建築基準法改正の影響が甚大なのは、鉄スクラップから主に建材を生産している電炉メーカーだ。原料となるスクラップの価格は世界的な需給逼迫を背景に、法改正以前から高騰が続いていた。原料高騰を受け製品価格への転嫁が急務だったが、そこに降って湧いた法改正で、足元は価格維持のための減産が続いている状況だ。最大手の東京製鉄<5423>をはじめ、電炉各社は軒並み営業減益となる見込みだ。
来08年度については、高級鋼需要が引き続き堅調に推移。建材需要も今期からずれ込んで回復に向かうという前提のもと、ひとまず「晴れ」とみているが、条件付きとなりそうだ。まず、建築基準法改正の影響がどの程度でおさまるのか。そして、スクラップだけではなく、鉄鉱石や原料炭など高炉向けも含めた原料価格の騰勢がどう推移するのか。寡占化が進む資源メジャーと鉄鋼原料の”爆食”が続く中国によって、原料価格がさらにつり上がる恐れもあり、これまでは好調を維持してきた高炉も苦境に立たされる可能性は大いにある。これらの諸条件次第では「晴れ」の予想が一気に「曇り」に変わり得るという状況だ。
【猪澤 顕明記者】
(株)東洋経済新報社 四季報オンライン編集部
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