まず第1に、「きちんと謝っている」点が挙げられます。「いや上が……」という言い訳には、「自分は悪くない。あくまで上司が反対しているのだ。そういうことってあるだろう?お互いサラリーマンなんだからわかってくれよ」という自己防衛的な開き直りが感じ取れます。そうではなく、自分の責任を認めて、謝罪しているところが好感度の高い理由。実際、目の前の人に「話が違う」という不快感を与えたのだから、表面上でも「謝る」のがスジということです。
あなたとは敵ではない、という雰囲気作りが大事
次に、「説得」という言葉も効いています。自分は言われっぱなしだったわけじゃない。上司にかけあったのだ、やりあったのだ、とアピールすることで、相手としてみれば「あぁ、がんばってくれたんだな」と交渉の場面を想像することができます。「いや上がそう言うので……」の一点張りをされるから、「じゃあ、お前は何をしてたんだ!?」と怒りが湧いてくるわけです。あくまで主語は自分にして、「説得したけどダメだった」と経緯を伝えるのは、実にフェアな姿勢です。
最後に、「共通の敵作戦」(参考:『戦略的、めんどうな人の動かし方』)をうまく使えているところも見逃せません。「いや上が……」という言い方だと、構図としては「担当者&上司の連合軍VS.あなた」です。まるで虎の威を借る狐のように、上司を後ろ盾に横車を押す印象に。そうなると「あなたじゃ話にならない。直接上司と話させてくれ」と、こちらも激高することになりますよね。
ところが「私は上司を説得しようとしたんだけど……」という言い方になると、「担当者&あなたの連合軍VS.上司」という構図ができあがります。上司という「共通の敵」が出現することで、担当者とあなたは、一緒に戦う「仲間」になるというわけです。重ねて「これからもあきらめずに調整を続けますので、もう少し待ってください」などと言われようものなら、「一緒にがんばりましょう!」と握手をしてしまいかねません。このように、言いにくいことをいうときには「テーブルの向こう側」に構えるのではなく、「私たちはテーブルの同じ側にいますよ」という雰囲気作りが欠かせないのです。
いかがでしょう。せっかく進めていたのに上司にちゃぶ台をひっくり返される……。自分自身が、はらわたが煮えくりかえる思いがするはず。ですが、それをそのまま関係者に垂れ流してしまっては、株が落ちるというもの。そこをぐっとこらえて、
「上を説得できなくて、すみません」
とひと言。災い転じて、かえって好印象を与えることも可能な言い回しなので、ぜひ使ってみてください。
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