先日、ある科学者の知人から面白い話を聞きました。彼は、ハーバード大学とオックスフォード大学、両方で研究生活を送った経験があるのですが、英米を代表する両校の学風・研究姿勢には、大きな違いがあったというのです。
英米を代表する両校の学風の違いとは?
ハーバードに代表される、米国の学者たちは、なんといってもビジョンを重んじます。ゴールを定め、そこへ向けて推論を推し進めていく。その際には、これまで培ってきた成果ややり方にはさほどこだわらず、どんどん変更。過去にこだわらず、よりよいゴールを目指します。
と、ここまで聞くと、これは現在のビジネス界でも主流となっている考え方のようでもあり、耳障りが悪くないと感じる人も多いでしょう。確固たるビジョンのもと現状を打破するのがクールで、それをしないと生き残れない、という趣旨のメッセージを私たちは日々目にしていて、米国的な思想は勢いを増す一方。米国的なものは増える一方に見えます。
科学者の彼いわく「米国は国家として歴史が浅いので、過去や現在を変えてしまうことに抵抗がないのでは?」とのこと。なるほど、米国および米国企業が発揮するパワーとスピードには、そういう背景があるのかもしれないな、と納得させられます。
さて、彼はその後イギリスに渡りオックスフォード大学でも研究を行いますが、そこでは、発想が真逆だったのだとか。
そこで重視されるのは、地道に積み重ねてきた推論です。何百年、何千年と変わっていないものには、それだけの理由があるはず。そうやって時間の淘汰をくぐり抜けてきたものを精査し、新たな共通点を見つけ出すことで、本質が浮き彫りになっていくはず。そういう考えにのっとって研究を進めるので、既存のやり方についても注意深く検証します。少なくとも、新しいビジョンのためなら既存のモノをガンガン壊してしまってもOK、という空気はないのだとか。彼自身は「個人的には、オックスフォード式の研究が性に合っていた」と語ります。
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