歴史は時代に合わせて書き換えられる 『ハーバード白熱日本史教室』を書いた北川智子氏に聞く
第3の課題は3日の猶予での2ページのペーパー書き。京都にタイムトラベルしてもらう。歴史事実と向かい合ったうえで、京都のある時期をコンパクトにまとめる。そして第4、第5となると、学内のスタジオを活用したラジオ番組作りや動画作りに進む。自分の責任でラジオの番組や動画を作るだけに、きちんと史料を読むことや講義の受講は欠かせない。これらも校内向けに発信する。最後は、いよいよ4D映画での仕上げ。再びグループ作業だが、タイムトラベルを4Dにして、これには本人も出演する。大学のメディアセンターを有効活用する。
確かに課題の量としては多く、かつ校内に公開されるので、学生にはかなりのプレッシャーになる。それでも受講希望者がどんどん増えたのは、楽しみに加え付加価値があると思われたからのようだ。
──4Dは「秀作」続出だったそうですね。
この「KYOTO」のクラスは、実際の外交にも貢献しうる歴史のクラスのモデルにもなりうる。海外の大学で教えられる日本史は、それ自体がいわば「外交官」的な役割を持っている。とりわけ、長い歴史がある京都には、日本のイメージをよりポジティブにできる要素がたくさんある。日本の一部分を学生が気に入ってくれることは、きっと将来、何かの役に立つだろう。
──なぜ先生に。
学んだからには教えてみたかった。大学院で博士課程にまで残ると、その後は自然に教職に就くものと思えてくる。そこで、ハーバード大学のカレッジフェローに応募したら運よく採用された、というのが実情。
──「アンビシャス」がこの本のキーワードになっています。
日本史が好きだから日本史の先生になろうというような目的性はなかった。強いていえば、のめり込み型。そのときいいな、好きだなと思ったことは苦もなくやっていくタイプだ。
数学史を初めて面白いと思ったのは1620年ごろの時期についてだった。その時代をいろいろと調べていくと、統一期の日本についての面白い文献がたくさん出てきた。そこで、「Lady Samurai」や「KYOTO」、それに「約束の歴史」をやろうと考えた。結果的にいえるのは、いずれもがほぼ同じ時期の事柄だということ。いわば、私自身がその時期の日本と東アジアのスペシャリストといえるかもしれない。