政策を先送りすれば選択肢は減っていく--『日本経済史』を書いた杉山伸也氏(慶応義塾大学経済学部教授)に聞く

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第1次大戦の後、日本は国際収支が改善して、債権国になった。すぐに金本位制に復帰すれば、米国とともに世界経済の中で主導権を握る可能性があった。ところが、それを先送りにしていく。リーダーシップの一翼も担うことができなくなる。

──高橋財政の評価もまた……。

どちらかといえば井上準之助派といわれている。その時代には通貨の発行が裁量的となり、管理通貨制度になった。高橋是清のときにはそれなりに抑えられていたが、馬場えい一や結城豊太郎になって、日本銀行が無制限に通貨を発行しインフレになってしまう。財政規律という視点から高橋の財政政策には批判的だ。

──400年を通観してのメインメッセージは。

政策を先送りすればするほど選択肢は減っていくという事実だ。

英国在住が長かったが、英国が欧州で主導権を握れないのは最初の段階で経済共同体に参加しなかったからだ。そういう組織やシステムには最初から入るべき。途中でやめてもいい。選択肢を多く残せるような方向でいくのが重要だ。TPP(環太平洋経済連携協定)もそうではないか。展望を示せるのがマクロの歴史研究者の役割だと思っている。

すぎやま・しんや
1949年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。ロンドン大学でPh.D.取得。ロンドン・サイエンス・オブ・エコノミクス専任研究員を経て、慶応大学助教授、91年より現職。著書に『Japan’s industrialization in the world economy 1859−1899』(日経賞)。

(聞き手:塚田紀史 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2012年6月30日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。


『日本経済史』 岩波書店 3990円 523ページ


  
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