労働者の非労働力化にはいくつか要因があるが、就職氷河期を経て不本意ながらも労働市場から退出を余儀なくされた方も相当含まれるだろう。景気回復が長期化してインフレが安定することで労働市場が引き締まり、こうした現役世代に就業の機会が訪れることで、労働市場の余剰が縮小する余地があるだろう。
賃金上昇が明確になりつつある米国
上記を含めた労働市場の余剰が更に小さくなり、また不本意に短時間の非正規労働の職にある現役世代の正社員化が進む過程で、今後名目賃金が上昇すると予想される。脱デフレの進展とともに起こるこのプロセスが道半ばにあるため2%インフレ実現にコミットして金融緩和強化を徹底するという、現在の日本銀行の政策姿勢は望ましいと評価できる。
なお、賃金の伸び悩みは、日本だけではなく一足早く金融政策の正常化を始めた米国でも議論になっていた。もちろん、デフレには陥らなかった米国では、日本ほど賃金の伸びは低くないが、失業率低下が続いた一方名目賃金上昇率は2010年から2%前後でほとんど伸びない状況が続いた。
ただ11月初旬に判明した10月の米雇用者の平均時給は前年比2.5%とほぼ6年振りの高さの伸びを示し、リーマンショック後の緩やかな景気回復局面でようやく賃金上昇が明確になりつつある。
米国でも伸びない賃金を巡り、失業率と賃金の関係が崩れたなどの議論が聞かれた。しかし、量的金融緩和強化解除後も慎重に出口政策を進めるなど、米FRBのねばり強い政策対応が功を奏して名目賃金が上昇し始めた。日本に先立ち量的金融緩和政策を拡大させた米国において、ようやく賃金加速の兆しが見え始めたわけだが、金融緩和など総需要安定化政策の徹底が賃金上昇にいずれはつながるということだろう。過去20年続いたデフレ環境に慣れきった日本企業の行動を変えるには、より時間を要するのかもしれない。
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