“震災関連死”は本当か、死因究明をおろそかにする日本--震災が突きつけた、日本の課題《2》/吉田典史・ジャーナリスト

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
“震災関連死”は本当か、死因究明をおろそかにする日本--震災が突きつけた、日本の課題《2》/吉田典史・ジャーナリスト

「東日本大震災の被災地で“震災関連死”と認定された方のご遺体は、殺人などの事件性が認められない場合はおそらく解剖はされていないと思う。遺体が見つかった場に駆けつけた警察官が地元の開業医などを呼び、その場でたとえば、『心不全』や『心筋梗塞』といったように死因が判定されていることが考えられる」

千葉大学大学院医学研究院教授で、法医学者の岩瀬博太郎氏は、被災地での死因確認の現状について切り出した。昨年の震災では、発生直後の3月に岩手県の陸前高田市などに赴き、遺体の検案(いわゆる検死)を行った。岩瀬氏は、東京大学医学部で助教授を務めたのち、36歳で千葉大学の教授に就任、現在は日本法医学会の理事も兼ねる。



■岩瀬博太郎氏

“震災関連死”の裏側

今、被災地では、仮設住宅などで死亡する人がしだいに増えている。復興庁は4月、避難生活から体調を崩すなどして亡くなった「震災関連死」が、3月末時点で1618人に達したことを明らかにした。

避難生活で死亡したり、ストレスによる自殺や、仮設住宅での孤独死などで震災との因果関係が認められれば、“震災関連死”となる。その場合には、遺族に災害弔慰金が支給される。

岩瀬氏は、「震災の影響で死亡した人に、政府として一定の支援をすることは必要」と認めながらも、死因の確認体制には疑問を投げかける。

「犯罪の抑止や、遺族への明確な説明を行うためにも、遺体を解剖するなどして死因を正確に究明することが必要だと思う。だが、解剖ができる法医の数が少なく、体制は脆弱だ。結果として多くの遺体は解剖されることなく、臨床医などが体の状態などを診て判断していくことになりがちとなる」

“検死の先進国”であるスウェーデン、オーストラリアなどを視察した経験もあるだけに、他の国との比較を通して問題を指摘した。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事