“震災関連死”は本当か、死因究明をおろそかにする日本--震災が突きつけた、日本の課題《2》/吉田典史・ジャーナリスト

さらに、被災地の“震災関連死”に絡めて語る。

「大きな事故や自然災害が発生した際に、死因をある程度は究明できる制度を作っていれば、被災地で行うような死因判定はしなくとも済んだのではないだろうか」

筆者は昨年から今年にかけて震災の被災地で取材をし、疑問に感じていることを尋ねた。宮城県石巻市の日和幼稚園に通園する園児たちが死亡したケースである。

地震発生直後、園は園児12人をバスに乗せて、海岸沿いの住宅街を走らせた。このあたりに住む保護者の元へ帰そうとしたのだ。7人の園児を降ろしたあと、バスは津波に襲われ、横転。その時点でバスに乗っていた園児5人すべてと同乗していた職員1人が死亡した。園児らの遺体は、焼死体だった。バスは火災により、焼け焦げていた。

筆者が昨年、日和山に住む住民から聞くと、大津波警報が鳴る中、バスが標高60メートル近い丘の中腹にある幼稚園から海岸沿いに向かったことには、疑問の声が多かった。

遺族はこの1年数カ月の間、ある疑念を抱いている。バスが横転した後、園児らが生きていたのではないか、というものである。遺族が独自で調査をすると、バスが見つかった付近に住む住民たちが、「震災当日の夜、子どもが助けを求める声を聞いた」と証言したからだ。

遺族はわが子が死亡したのは、津波による溺死であるのか、それともその後の火災による焼死であるのかを知りたいのだ。今年4月、筆者が取材で遺族4人と会うと、「本当の死因を知りたい」と質問を受けた。

ここまでの説明を聞いた岩瀬氏は、こう答えた。

「遺体の解剖をしていない以上、正確に死因を判定することは難しい。焼死体の状態にもよるが、解剖とそれに付随する検査をすれば、ある程度のことがわかることがある。たとえば、喉の奥にススを吸った跡があるならば、バスが津波に襲われた後、火災が発生した際には、生きていた可能性がある」

そして、こう続けた。

「遺族は真相がわからないから、それを知ろうとする。ところが、わからない。それで出口のない悩みを抱えておられるのだろう。私が相談を受ける遺族にも、同じような問題にぶつかる方がいる」

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