“震災関連死”は本当か、死因究明をおろそかにする日本--震災が突きつけた、日本の課題《2》/吉田典史・ジャーナリスト

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「全国紙がこの件の前にも、死因判定に不備がある事件を大きく報じていた。そして、そのすぐ後に時津風部屋事件が起きた。警察はいよいよ、真剣に取り組まざるをえなくなった」

警察が扱う変死事案は増えているが、解剖を担当する解剖医のポストは減り続けている。法人化により効率化を求められている大学は、成果が評価されやすい分野や収益につながる分野には力を入れる反面、“地味”な分野に対するコストカットを強めている。法医学者がいる法医学教室のポストは少数になり、そこ以外で医師として働くこともなかなかできないといわれる。
 
 そのうえ、岩瀬氏は「法医をはじめスタッフらの労働環境は劣悪であり、医師や人材が集まらない傾向がある」と問題視する。

「40代半ばになろうとも、年収は同世代の開業医や臨床医よりははるかに低く、3年目の研修医の年収のほうが多い場合さえある。待遇面では国は無策のままであり、これでは、医師がなかなか集まらない」

死因究明推進法が浸透するためには、検視・検案の体制を一段と整える必要があるが、その中核になる法医学者の待遇がこのレベルでは、法律は掛け声倒れになってしまわないだろうか。

これまでの災害や事故で培ったはずの教訓を“学び”として生かすことができるかどうか。とりわけ、2万に近い死者・行方不明者が出た昨年の震災を機に、私たちは、あらためて“死”に向かい合う必要がある。


よしだ・のりふみ
人事・労務分野を中心に取材・執筆を続ける。著書に『あの日、「負け組社員」になった…』(ダイヤモンド社)、『いますぐ、「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)、『震災死 生き証人たちの真実の告白』(ダイヤモンド社)など。

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