“震災関連死”は本当か、死因究明をおろそかにする日本--震災が突きつけた、日本の課題《2》/吉田典史・ジャーナリスト

死因究明を進めるために

岩瀬氏は、超党派の議員立法として今国会で6月15日に成立した「死因究明2法」に、当初からかかわってきた。遺体の死因を調べる制度のあり方を検討する警察庁の有識者研究会の委員として検討も重ねてきた。

「死因究明2法」の2法とは、態勢の整備を定めた「死因究明推進法」と、実務面に関する「警察などが取り扱う死体の死因・身元調査に関する法」を意味する。

これらにより、犯罪死であるのかわからない場合でも、警察が法医学者らの意見を聞いて必要と判断すれば、遺族の承諾なしで遺体を解剖できるようになる。警察が扱う遺体の解剖率は2011年で11%だが、今後は20%まで引き上げることを目指すという。

岩瀬氏は、死因究明制度にかかわる法律の所管省庁は、警察庁や文部科学省など、いくつもにまたがると述べたうえで、問題を提起する。

「死因究明2法について、警察庁は熱心に取り組んでいた。だが、他の役所の中には、必ずしも熱心とはいえないと思えるところもある。その意味で今後、死因究明法が骨抜きにされないか、と懸念している。解剖率を上げるならば、当然、それができる医師などを増やす必要がある。そうしたことも含め、私たち法医学者は状況を見届けるべきだ」

岩瀬氏は、警察が死因を正確に判定することに取り組むきっかけとなった1つの出来事が、07年に愛知県犬山市で起きた、大相撲の時津風部屋事件だという。

稽古の後に力士が死亡したのだが、警察は当初、遺体を解剖することなく、「病死」と判断した。だが、遺族が不審に思い、解剖することを依頼した。解剖が行われた結果、暴行を受けた「犯罪死」であることが判明した。

岩瀬氏は「はるか前から、警察が正確な死因判定をしていないために、犯罪死を見逃すことがあった疑いはある」と語る。解剖の専門医の数は全国で百数十人ほどしかいない。変死体の約9割は、外表検査のみで死因が判定されている。犯罪死の見落としがあるという指摘である。

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