「厳しすぎる販売ノルマ」を販売担当者に課した金融機関の悲惨な結果

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「少額の罰金は、"遅刻はそれほど悪いものではない"というシグナルを送る」という仮説は、私たちが実施した実験で、いったん導入した罰金を撤廃した後に親の遅刻状況を観察した結果からも裏付けられている。罰金撤廃後も、親は罰金導入後と同じ比率、すなわち導入前の2倍の比率で遅刻をし続けていたのだ。親はわずか3ドルという罰金の額から、遅刻はそれほど悪いことではないと学習したのである。

小規模な保育園だけではなく、大規模な組織も、同じように誤ったシグナルを送るというミスを犯す可能性がある。たとえば、ウェールズ政府だ。同政府は、学期中に子どもを自己都合で休ませた親に60ポンドの罰金を科す政策を導入した。親は、旅行費用の相場が安く、観光地が混雑していないときに家族旅行をするために、平日に子どもを学校に行かせず、休ませることがある。保育園での遅刻への罰金が3ドルだったのと同様、60ポンドの罰金は「料金」として機能した。親は、この程度の罰金で済むのなら、子どもに数日間学校を休ませる価値はあると判断するようになった。

ある報告によれば、この罰金制度の導入後、家族旅行のために自己都合で子どもを休ませる親が増加した。費用が割高なホリデーシーズンに旅行するよりも、60ポンドの罰金を払うほうが経済的にお得だとはっきりと述べた親もいた。抜け目のない旅行代理店は、この罰金分を代理店側が負担することを売りにするパッケージツアー商品を販売し始めた。

罰金を設定するときは、手加減してはいけない

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この2つの事例は、罰金が「料金」として機能するだけでなく、罰金額の多寡(たか)が強いシグナルとして機能することも教えてくれる。アメリカの保育園の中には、お迎えに遅刻したら1分ごとに5ドルの罰金を科すところもある。

さらに厳しい罰金もある。あるニュージーランドの母親は、1分遅れただけで55ドルの罰金を科されたとフェイスブックに投稿している。その保育園では、お迎えに遅刻した場合は一律で20ドルの罰金が取られ、さらに1分から30分遅れた場合は35ドル、31分から1時間遅れた場合は85ドルが科される。

この高額の罰金は、どのくらい効果的なのだろうか? この保育園によれば、この罰金制度を導入してからの1年間で、遅刻はわずか2件しかなかったという。これは、私が知っている保育園にとっては夢のような数字だろう。

アムステルダム大学経済経営学部のハン・ファン・ディッセル学部長は、厳しい罰則の好例を私に教えてくれた。パリの保育園には、親が時間までにお迎えに来なかったら、子どもを警察署に連れて行くことにしている所もあるという。つまり遅刻した親は、警察署に子どもを迎えに行かなければならない。この厳しい罰は、遅刻すると面倒なことになるだけではなく、それがとてもひんしゅくを買うものであることも示している。ウェールズ政府は、学期中に子どもを休暇旅行に連れて行くために休ませることに対して高額の罰金を科していれば、大きな効果が見込めたはずだ。インセンティブの大きさは、シグナルになるのである。

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